県の責任認め知事謝罪 紀の川市の土砂崩れ
10月22日に台風21号の豪雨により和歌山県紀の川市西脇地区の斜面が崩れ、住民の男性(82)が死亡した事故を巡り、有識者による県の調査検討会(会長=大西有三京都大学名誉教授)は27日、県による広域農道の整備が斜面崩壊の原因の一つとする見解を示した。これを受け、仁坂吉伸知事は28日午前に県庁で記者会見し「単なる自然災害ではなく、県として責任がある。被災された方々に対して心からお詫び申し上げる」と謝罪し、補償の手続きを進める考えを表明した。
27日に和歌山市の県民文化会館で開かれた第3回調査検討会には、地元住民も参加。土砂崩れの原因について意見を述べた。終了後に記者会見した大西会長は「広域農道の存在により周辺の地下水の流れが変わり、水圧の上昇が早くなったと見ている」と県の責任に言及。県の広域農道整備工事では一日の雨量130㍉程度までを想定していたが、事故当日は219㍉の雨が降ったことから、大西会長は「通常の雨量なら問題はないが、200㍉を超えるような雨量に対しては排水能力が足りなかった」と、想定外の事態だったとの認識を示した。
調査検討会は今後も、事故原因の詳細な検討を行う。
調査検討会の見解を受け仁坂知事は、広域農道の整備が地元住民をはじめとする関係者の悲願だったとし、「県が一生懸命造ってきたものが死者まで出してしまったのは非常に遺憾。いずれ現場に行き直接お詫びしたい」と述べ、補償については、専門家による損害額の算出などを経て進めていく考えを示した。
土砂崩れにより父を亡くした坂口雄治さん(54)は「こちらの主張をある程度認めてもらえたのは良かったが、下に民家があるのに想定外というのはどうなのかと思う。知事は早く現地を見に来てほしい」と話した。