チワワ育てて半世紀 ブリーダーの杉田さん

うるうるとした大きな瞳が特徴の小型犬・チワワ。和歌山県和歌山市今福の杉田美知男さん(80)は、そんなチワワを半世紀以上にわたって専門に扱うブリーダー(育種家)。それほどまでに人を引き付ける魅力とは何なのか。戌(いぬ)年を迎えたことしのスタートに、チワワ一筋に愛情を注ぐ杉田さん宅を訪ねてみた。

しっぽを振って駆け寄り、元気に迎えてくれたのは約30匹のチワワたち。名前はシャネルやポピー、コテツ、マロリン、小雪…。ほとんどほえず、みんなちょこちょこと走り回り人懐っこい。「かわいいでしょう? 毎日この子たちに癒やされています」と杉田さんがほほ笑んだ。

杉田さんは、犬の血統書発行、公認資格試験の実施などをするジャパンケネルクラブ(JKC)の公認資格者。チワワ単犬種の審査員資格を持ち、全国各地のドッグショーで審査を担当。日本で最初に発足した東京チワワクラブの創立チャンピオン大会(1975年)でも審査に携わった。

小さい頃から自宅で犬を飼っていた杉田さん。29歳で初めて、カナダから輸入したチワワを飼い始めた。その愛らしさに魅せられ、2匹、3匹と増えていき、いつしかブリーダーになることを決意。以後は輸入業者を通じてアメリカから19匹のチャンピオン犬を輸入し、大切に繁殖してきた。

その数は多いときで約100匹。杉田さんによると、より良いチワワのポイントは「アップルヘッド」と呼ばれる頭の形の美しさ、45度に開く耳、マズル(鼻から口のあたり)の短さなどという。

健康面や衛生面に十分配慮し、血統の良いチワワを育成。ドッグショーにも積極的に参加し、受賞歴も多い。

15年ほど前には、チワワが某CMに登場して人気が沸騰。杉田さんのようにアメリカのチャンピオン犬を持つブリーダーは珍しく「北海道から九州まで、あちこちから問い合わせがありました」と振り返る。

一日に3回お産があったこともある。6匹産まれた時には、3時間ごとに真夜中に起きてミルクをあげるなど、わが子を育てるように愛情を注いできた。

中には桃太郎の昔話を語ったり、歌ったりすると「ワンワン…」と一緒に合わせる子や、ひざに乗せ「足が痛いよ」と言うと、両手でもみ込むようにマッサージするけなげな子も。「小さいぶん弱い犬種と思われがちですが、とても丈夫で利口なんですよ」

杉田さんは藤若流創作新舞踊の宗家・藤若緑風として今も舞台に立つ。この2年半で三つのがんを患い、7度の手術を受けたが「主治医が不思議だと首をかしげるほどの回復ぶり。こうして健康が維持できるのも、この子たちのおかげ」と話す。

小型犬のチワワは室内で飼えるのも魅力で「ひざに抱っこして話し相手になる。高齢化が進む中、お年寄りにはチワワを飼うのがお薦め。愛好者が増えるよう願っています」と話している。

愛するチワワたちと笑顔の杉田さん

愛するチワワたちと笑顔の杉田さん