上田さん優秀コーチ賞 デフバスケ代表監督
プロ・アマチュアの垣根を越え、優れた業績を残したスポーツ指導者を表彰する「第5回ジャパンコーチズアワード」で、聴覚障害者の競技「デフバスケットボール」の日本代表監督、上田頼飛(よりたか)さん(36)=和歌山県岩出市=が優秀コーチに選ばれた。
一般社団法人ジャパンコーチズアソシエーションが主催。今回は、最優秀コーチに花咲徳栄高校硬式野球部の岩井隆監督、優秀コーチに上田さんや青山学院大学陸上競技部の原晋監督、慶応義塾大学野球部の大久保秀昭監督ら5人が選ばれ、表彰された。
デフバスケは一般の認知度はまだ低いが、ルールは健常者のバスケットボールと変わらず、耳の聞こえにくさの程度に関係なくプレーできる。上田さんは2014年に監督に就任。家業の僧侶(松原山玉前寺)を務めながら選手のレベルアップや意識改革、デフバスケの普及に努めている。
上田さんはジャパンコーチズアワードの式典には毎年出席しており、今回の式典(1月27日)も準備をしていたところ、スケジュールの連絡を受けた数日前に初めて自分が受賞者であることを知り戸惑ったという。
代表監督就任当初は選手の試合へのモチベーションも低く、観客も何となく応援している状態だったという。上田さんは選手に「必ずヒーローにするから」と話し、チームの取り組み方法を一新。新たなトレーニングを取り入れ、チームの雰囲気も引き締めた。当初は選手からの反発も大きかったが、「プロになりたい」と意志の強い選手を選考し、上田さんも一緒にトレーニングに励むことで、選手の意識にも変化が芽生えた。
上田さんはNPO法人「one‐s future」の理事長も務め、障害者スポーツとして支援される側だけでなく、他方面への支援をしていこうと、女性の就労支援や発達障害児のための療育施設設置など社会貢献の取り組みを進めている。
監督就任から3年。選手の意識の変化と活躍で知名度も上がり、少しずつ憧れを持ってもらえる競技になってきた感触があるという。ことし7月にはアメリカでU21の国際大会、11月にはオーストラリアでアジアクラブカップ、2019年には世界大会と、国際大会も多く控えている。上田さんは今後もメダルを目指しつつ「競技のやりがいづくりを通して、憧れや目標になる人物を育成したい。その中で結果は出てくるものだと思う」と話している。