家康紀行(59)本丸御殿の復元願う「春姫道中」

前号では、木造天守閣の復元が決まった名古屋城天守と本丸御殿の歴史を取り上げた。10年の時を経て復元工事が行われ、ことし6月完成公開を迎える本丸御殿であるが、これは和歌山市と名古屋市の深いつながりを題材とした市民発信型のお祭りが後押しになったとされる。今週は、本丸御殿の復元運動として知られる「春姫道中」を紹介したい。

春姫道中とは、元和元年(1615)名古屋城の初代藩主である徳川義直に、紀州浅野家から13歳で嫁いだ「春姫」の御輿入れを再現した時代行列。23年前、本丸御殿の復元を目指す市民の有志らが復元運動を実施。本丸御殿に最初に住むことになった春姫にスポットを当て、絢爛(けんらん)豪華な花嫁行列を総勢600人ものキャストで再現するもの。

春姫は紀州藩初代藩主・浅野幸長(よしなが)の娘で、紀州和歌山に生まれた。歌を好み、琴の名手として成長。御輿入れの光景が非常に豪華であり、見物していた当時の人々がそれを良しとしたことが、現代に伝わる名古屋の豪華な結婚式の由縁になったといわれている。

平成27年の第21回では、春姫の輿入れから400周年にあたることから、和歌山市は主催団体より招待を受けイベントに参加。城内に紀州浅野家や和歌山城の紹介が行われるなど、春姫の故郷・和歌山市と、嫁ぎ先・名古屋市の深いつながりが認識されるようになった。

ことしの春姫道中は4月22日の開催予定。熱田神宮を参拝した後、百貨店などが建ち並ぶ大津通をパレードし名古屋城へ。名古屋城の特設ステージではイベントも行われる。6月に本丸御殿の完成公開を迎えることから、今回をファイナルと位置付けているという。

(次田尚弘/名古屋市)