漆文化を世界へ発信 産地自治体がサミット
漆文化の発展や保護、継承について考える「第25回ジャパン〈漆〉サミット」が16日、和歌山県和歌山市のダイワロイネットホテル和歌山で開かれた。海南市をはじめ国の伝統的工芸品に指定された漆器の産地を有する全国23自治体の首長ら約40人が出席。海外販路の拡大や原料確保の取り組みなどについて事例発表や協議が行われた。
サミットは、紀州漆器の産地である海南市の神出政巳市長を議長に、福井県江市や石川県加賀市、秋田県湯沢市など日本各地の首長らが、漆器産地を取り巻く課題について意見交換した。
神出市長は2020年の東京五輪・パラリンピック開催にふれ「この機会に、漆器の魅力を広く発信しなければならない。サミットが漆器業界の振興につながることを期待している」とあいさつ。海南市議会の川崎一樹議長は、会場の壁面に漆器のオブジェが使用されていることを紹介し「漆は本当に美しい。伝統と技術を継承していきたい」と話した。
事例発表では、長野県塩尻市産業政策課の若林智彦さんが「木曽漆器のインバウンド・海外展開の取り組みについて」をテーマに報告。羽田空港でのインバウンド向けの紹介イベントが盛況となり、重箱や人形などに引き合いがあったことなどを紹介した。
東京藝術大学の三田村有純名誉教授は、漆の木植栽の現状と課題について話した。中国発で漆器産業を拡大する機運が高まっていることを指摘し「漆は縄文時代には日本各地に生えていた。文化の中枢である漆器は、日本発で世界へ発信するべきだ」と強調。協議では、木の生育には約10年を要することから、長期にわたる植栽支援プログラムの必要性を確認した。
最後には、漆の魅力や産地の歴史・文化の国外への発信、国産漆の一定量確保を目指すこと、自治体間の連携強化などを盛り込んだ共同宣言を採択した。
翌17日には、海南市内の視察があり、参加者は紀州漆器伝統産業会館うるわし館、琴ノ浦温山荘園を訪問した。