70年愛されるビリヤード場 経営の田辺さん

 室内にコツン、コツンと玉と玉が当たる音が響き渡る。およそ70年の歴史があり、和歌山県内で最も古いとされるビリヤード場、和歌山市中之島の「ビリヤードニュー東和」。営むのは2代目の田辺文代さん(78)だ。全国的にはビリヤード場が減少している中、全盛期だった時代から今も変わることなく社交の場を提供し続ける田辺さんは「続けてこられたのは、長くビリヤードとこの場所を愛してくれる常連客の皆さんのおかげ。若い方にも愛好の輪を広げたい」と話している。

 終戦後、田辺さんの母しげさんが同市美園町に前身となる「東和ビリヤード」をオープン。1970年に現在の場所に移転してから、休むことなく経営を続けてきた。

 田辺さんは美園町で生まれ、城東中学校に通った。放課後には母の手伝いをしながら、毎日ビリヤードを楽しむ客とコミュニケーションを取って楽しませた。

 バブル時代は多くの客が押し寄せ、順番待ちをする客が後を絶たないほど大忙しだった。しかし、景気や時代の変化とともにビリヤード人口が減少し、経営も容易ではなかったという。「暇になった時がありました。家賃や電気代、駐車場などお金や気持ちの面でしんどい時期が続きました」と険しかった道のりを振り返る。

 それでもビリヤードへの愛は失わなかったという。「純粋にビリヤードが好き。特にお客さんといろいろと話すのが楽しいんです」と笑顔。

 室内にはビリヤード台が五つあり、会員は1時間500円、一般は600円で利用できる。さらにコーヒー1杯付きというのも、長年多くの人に愛されてきた理由の一つ。営業時間は午後2時から午前3時まで。日曜や祝日の前日は午前6時まで、年中無休で営業する。

 「サービスが良かったこともあるかもしれないけれど、常連のお客さんたちに支えてもらったことが長続きした秘訣(ひけつ)だと思います」と感謝の念を忘れない。

 「ビリヤードはやらないと面白さが分からない。ポケットに入る瞬間が何とも言えないくらい気持ちいいんです。勝負の駆け引きも醍醐味(だいごみ)」と魅力を語る。  

 若い頃に楽しんだ人が、懐かしくなって訪れるケースもあるという。

 「さまざまな年齢層のお客さんに来てもらい、楽しく突いてもらえたら。ビリヤードをもっと広く知ってもらって愛好者を増やしたい」
 田辺さんは生涯現役でビリヤードの面白さを伝えながら、お客さんとの交流を楽しむ。

 問い合わせは同ビリヤード場(℡073・423・2555)。

「お客さんに楽しんでもらうことが一番」と田辺さん

「お客さんに楽しんでもらうことが一番」と田辺さん