早期発見しサポート 済生会に「物忘れ外来」

 済生会和歌山病院(和歌山県和歌山市十二番丁)が、認知症に特化した「物忘れ外来」を開設した。4月に脳神経外科部長に着任した小倉光博さん(55)が担当する。超高齢化社会を迎える中、認知症は本人だけでなく家族にとっても切実な問題となっている。小倉さんは「年齢による脳の衰えを止めることはできないが、生活習慣の見直しや運動などで進行を抑えることはできる。気楽に受診してほしい」と呼び掛けている。

 小倉さんは県立医科大学付属病院で8年間、600人以上の認知症患者を診察してきた。認知症とは、脳の機能が低下した結果、日常生活や社会生活に支障を来す状態。「ちょっとしたことを忘れる、同じことを何度も聞くといった『物忘れ』の症状があるから、直ちに『認知症』というわけではない」という。物忘れ以外の他の症状が出て初めて、認知症と診断される。

 近年増えているのが、「軽度認知機能障害(MCI)」といわれる認知症の前段階にある人たち。正常と認知症のはざまにあり、早い段階で適切な手を打たないと認知症に移行する確率が非常に高い。小倉さんは「MCIのうち9割の人が認知症にならずに済むというデータもある。生活習慣や環境を踏まえた適切な助言で予防につなげたい」と力を込める。

 物忘れ外来では、血液検査やMRI、CTといった検査に加え、言語聴覚士による「認知機能検査」を行い、計算や記憶力テストなどを通して脳の認知機能を多角的に調べる。問診も重視している。症状を感じるようになるまでの経過や、物忘れ以外の症状がないか。どんな環境で生活しているかなど、本人や日頃の生活を知る家族らにじっくりと話を聞く。

 「脳が衰えていても、残った機能でやりくりすることができる」と小倉さん。だが、「意欲をなくしやる気がない」「体や頭を使わない」といった生活が続くと、認知症が進む引き金になる。「適切な診断を早く受けることで、家族も対応しやすくなり、本人の意思に沿う支援ができる。丁寧な説明を心掛け、患者さんと地域の支援機関をつなぐ窓口になれたら」と話している。

 完全予約制。予約や問い合わせは地域医療連携室(℡073・424・5185)。

担当する脳神経外科部長の小倉さん

担当する脳神経外科部長の小倉さん