家康紀行(70)名古屋の朝は「小倉トースト」

 前号では、食べ方が特徴的な「ひつまぶし」が生まれた理由の一つに、豆味噌の醸造工程で生まれるたまり醤油が使われ、暑い気候を乗り切るためのアイデア料理であることを取り上げた。今週も話題は名古屋めし。昨今、名古屋発祥のチェーン店の出店により県内でも目にすることが増えた「小倉トースト」。生まれた経緯と、喫茶店に関連する和歌山市の日本一を紹介したい。
 小倉トーストは名古屋の朝に欠かせない存在。モーニングを注文するとサービスで提供される。トーストに塩バターを塗りその上に小倉あんをかけて食べる。
 生まれたのは大正10年ごろのこと。中心地・栄にあった、ぜんざいが人気の店が事の始まり。当時、流行であったバタートーストを、当時の大学生らがぜんざいにくぐらせて食べていた。それを見た店主が小倉トーストを思いつき、メニューにしたところ大ヒット。昭和30年ごろには名古屋市内の多くの喫茶店で提供されるようになったという。
 喫茶店でモーニングを楽しむという文化は、市民が喫茶店を好む証。平成26年の総務省統計局の資料によると、人口千人当たりの喫茶店数は、愛知県が第3位。
 筆者が驚いたのが、和歌山県が同率で第3位であること。さらに、県庁所在地および政令指定都市の喫茶店の総数に占める、個人経営の割合の第1位が和歌山市。継いで、第2位が堺市である。言われてみれば、小さくともそれぞれに個性があり、マスターがこだわりを持って提供してくれるところが多く感じる。
 古くから茶の文化が盛んであったからなのか、その理由は定かではないが、店ごとに異なる魅力にふれられる喫茶店。和歌山市民にはその味わいにふれるチャンスがある。
(次田尚弘/名古屋市)