恐れず死に向き合う 訪問医療映画でトーク
高知県四万十市で訪問医療に力を注ぐ医師、小笠原望さんに密着したドキュメンタリー映画『四万十~いのちの仕舞い』(溝渕雅幸監督)が和歌山県和歌山市でも公開になり、24日にはイオンシネマ和歌山で上映後にトークイベントが行われた。ともに溝渕監督と親交があり、夫を自宅でみとった経験がある海南市の岩崎順子さん(58)、在宅医療に取り組む坂口内科(紀の川市貴志川町)院長の坂口健太郎さん(70)が、それぞれの立場で意見交換した。
映画は、四万十川の美しい自然を背景に、小笠原さんと患者とのありのままの日常が描かれ、見る人に老いや命について問い掛ける。
岩崎さんは「みとりというのは息を引き取る最期の瞬間だけではなく、その前も後も、その人が見せてくれた姿を受け継いでいくことではないか」と体験談を語った。
坂口さんは、家族の中には死を受け入れられないケースもあると指摘。「特に体が弱っていく過程を見ていない人は、死にゆく人を前にして戸惑う。プロセスを見ておくことが重要」と強調。
ストレートな物言いで知られる坂口さんは、トークもユーモアたっぷり。「人は生まれてきたら死ぬのが自然やと思っていても、自分が死ぬとなったら、そうはいかん。これは大問題。この作品はちょっとツッコミが足らん」と命への執着について切り込み、会場の笑いを誘った。
また「映画を見て、地域医療はすばらしい、という話で終わらないでほしい。人が死に際して、どれほど悩み苦しむか仮の話として考えて。最後に残るのは自分の心、死に対する不安。どう処理するかという大問題はついて回る。ぜひそれを考えて」とメッセージを伝えた。
映画を見た市内の50代の女性は、約1年半前に自宅で父親をみとったと言い「やるだけのことはやって、すっきりとした気持ちで送れました。生死について、若い世代も自分のこととして受け止めることが大事。それを認識すれば、日々の過ごし方も変わってくるのではと思います」と話していた。