龍神に墜落したB29 11日平和講演と映画

 日高新報社の創刊90周年記念事業「平和を考える講演・映画上映会」が8月11日、御坊市民文化会館小ホールで開かれる。講師は和歌山県田辺市龍神村の郷土史研究家で、戦争末期、自宅近くの山にB29が墜落する瞬間を目撃した古久保健さん(80)。映画は、村人と死亡した米軍パイロットの遺族との交流などを記録した笠原栄理監督のドキュメンタリー『轟音』を上映する。

 1945年(昭和20)5月から6月にかけて、県内では3回、米軍の大型爆撃機B29が地上に墜落した。うち2回の現場は日高地方で、5月5日に日高郡上山路村(現田辺市龍神村)殿原、6月26日には日高郡寒川村(現日高川町)串本に墜落し、殿原では11人の乗組員のうち7人が死亡、4人が村人らによって捕えられ、憲兵隊に引き渡された。

 講演会の講師を務める古久保さんは、B29が日本の海軍の戦闘機に追撃され、煙と炎を噴出しながら山に墜落した瞬間を目撃。当時、国民学校初等科の2年生で、その日は土曜日。学校から帰り、午前11時前に昼食のおかいさん(おかゆ)を温めようとしていたところだった。

 大きな飛行機のエンジン音と機銃の音に驚き、外に飛び出すと、超低空を飛ぶB29が目に入った。B29は日本の戦闘機の攻撃を受け、機体から炎が上がり、真っ黒な煙が赤みがかったどす黒い色に変わった瞬間、急激に高度が下がって分解。数秒後、今度は白い落下傘で乗組員が飛び出し、直後に機体は爆発して3方向に落ちたという。

 1カ月後の6月9日、終戦前にもかかわらず、村により初の供養が仏式で営まれ、現在まで毎年5月5日に慰霊祭が行われている。今回の講演では、戦争当時の国民の暮らし、教育、平和と命の尊さ、過去の戦争を学ぶことの大切さなどを語る。

 講演会は午後0時30分開場、1時開演で、映画は2時30分から上映。入場料は500円(全席自由)、中学生・高校生は先着50人まで無料(チケット必要)。チケットは、日高新報社(御坊市湯川町財部604)と同みなべ支局(みなべ町芝378の4)、和歌山新報社(和歌山市福町49和歌山中橋ビル4階)で販売中。中高生のチケット申し込み、問い合わせは日高新報社戦争と平和を考える講演・映画上映会実行委員会(℡0738・24・0077)。

B29が墜落する瞬間を目撃した講師の古久保さん

B29が墜落する瞬間を目撃した講師の古久保さん