農業体験農園が人気 JAわかやま展開中
JAわかやまが後押しする市民向けの「農業体験農園」が人気を集めている。農機具や苗、肥料などの準備がいらず、手ぶらで訪れ気軽に農作業を楽しめるのが魅力。住民と農家の交流の場としても期待されており、JAは「地域の農業に対する地元の人たちの理解を深め、農の楽しさを知ってもらう場になれば」と、さらなる開園を目指している。
ことし4月、和歌山和歌山市新中島に開園した「太田ファーム」。午前6時ごろをピークに出勤前の人らが次々に訪れ、水やりなど束の間の土いじりを楽しむ。
約1600平方㍍に27区画。畑の入り口近くには駐車場とトイレを完備する。じょうろやスコップ、くわなど農作業に必要な作業道具の他、肥料や支柱、防鳥用ネットまで用意しており、自由に使うことができる。
年間利用料は1区画(約20平方㍍)4万円(税別)。収穫に訪れていた女性(38)は「気楽に来られるし、分からないことがあればすぐに教えてもらえる。きょうはホウレンソウとミズナを植えた」と笑顔を見せた。農薬を使わないことだけがルールで、園主の太田政文さんは「『畑仕事をしているうちに気分が晴れた』などと聞くとうれしい。土いじりで元気になってもらえたら」と話す。
土地だけを貸し出す従来の市民農園では、農業の知識や技術がないため途中で挫折してしまう利用者も多い。一方の農業体験農園は、園主が主体となり、畑の畝を作ったり年間の作付け計画を練ったりする。定期的に開く講習会では、利用者に苗の植え付けや種まきの仕方など栽培指導も行う。
関西有数の農業県である和歌山で「都市農業の振興」を目指そうと、JAわかやまが2015年から和歌山大学観光学部と「農業体験農園」をテーマに共同研究を始めたのがきっかけ。16年に和歌山インターチェンジ近くに「鳴神ファーム」が開園したのを皮切りに、18年4月に「太田ファーム」、「梅原ファーム」(同市梅原)がオープンした。
農業体験農園で先駆的な東京・練馬区では、農園経営だけで500~600万円の収入があり、農業者が経営の柱としているケースが報告されている。JAわかやま営農生活部の担当者は「1000平方㍍なら60万円以上の収益が見込め、農家の所得向上にもつながる」と話す。利用者にとっても、農園主とのふれあいや利用者同士の交流を楽しみ、「新鮮で安全な野菜を自分の手で作る」醍醐味(だいごみ)も味わえる。
海南市小野田にオープンした「青空ファーム」(10区画)では現在、利用者を募集中。JAは「いずれは10園の開設を目指したい。和歌山に楽しいものがあれば、住みたいと思う人も増えるのでは」としている。
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JAわかやまは1月13日午後2時から、和歌山市栗栖のJAわかやま中央営農センターで、「農業体験農園講演会」を開く。東京・練馬区の農業体験農園「緑と農の体験塾」の園主や和歌山大学観光学部の藤田武弘学部長らが、農園の利用者や開設者に向けて講演する。
参加無料。申し込み不要。問い合わせはJAわかやま(℡073・473・9402)。