医療等に実用期待の高伸長FPC 太洋工業

薄くて柔軟性があるフレキシブルプリント配線板(FPC)の開発・製造などを手掛ける太洋工業㈱(和歌山県和歌山市有本、細江美則社長)は7日、人体の関節部分などへの対応が可能な、より伸縮性の高いFPCを開発したと発表した。医療分野で生体情報取得のために体に貼り付ける「ウェアラブル電子機器」をはじめ、多様な実用化が期待される。

同社によると、人や人型ロボットの肘や膝など曲げ伸ばしする関節部分にFPCを使用するには、50%程度の伸長が要求されるが、フィルム上に蛇腹形状の銅を使用した従来の回路では20%程度の伸長にとどまり、耐久性が不足している状態だった。

また、材料を見直し、伸縮性銀ペーストを採用することで高い伸長は期待できるものの、回路の微細化やはんだによる電子部品の実装が課題となっていた。

新開発の「高伸長FPC」では、伸縮性があり弾性や柔軟性に優れているTPU(熱可塑性ポリウレタン)フィルム上に、従来の蛇腹形状の銅回路と伸縮性銀ペーストを使って電子回路を形成。微細な配線や電子部品実装部に銅回路、大きな伸長が必要な箇所に伸縮性銀ペースト回路を用いることで、50%以上の伸長にも対応が可能となった。

高伸長FPCは、医療や介護、ヘルスケアで心拍数などの生体情報を取得するウェアラブル電子機器への活用や、人体に装着して補助的な役割を果たすパワードスーツ、介護補助機器、携帯電話などに使用される3次元立体配線板など、多様な分野での実用化が期待される。

同社研究開発部の浅井頼明部長は「痛みや負担を軽減できる高齢者向けの装置などに使っていただけたらありがたい」と話している。

同社は16~18日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれる「第5回ウェアラブルEXPO」に高伸長FPCを参考出品し、企業や研究機関などにPR活動を行う。

関節にも使える「高伸長FPC」を手にする浅井部長

関節にも使える「高伸長FPC」を手にする浅井部長