備えと早期避難重要 南海トラフ地震シンポ

東日本大震災から8年を迎えるのに合わせ、南海トラフ巨大地震について考える気象庁など主催のシンポジウムが10日、和歌山県和歌山市小松原通の県民文化会館小ホールで開かれた。同地震と東日本大震災の比較や、求められる対策などについて専門家らが講演とパネルディスカッションを行い、約300人が聴き入った。

全国で実施している「地域『防災・減災』シンポジウム」の一環で、今回は「情報と行動が命を救う」をテーマに2部構成で開かれた。

第1部では、気象庁地震予知情報課長の青木元さんが「南海トラフ巨大地震から命を守る」と題して講演。大地震による被害の具体例として、建物の倒壊や地滑り、火災、津波などを挙げ、1923年に発生した関東大震災では、犠牲者の約9割が火災によるものだったと説明。昨年6月の大阪北部地震で発生し、小学生が死亡したブロック塀の倒壊にもふれ、「ブロックは1個の重さが約10㌔もある。身近な危険だ」とし、対策の必要性を訴えた。

約100~150年の間隔で発生している南海トラフ巨大地震については、「前回は約70年前でまだ大丈夫と思うかもしれないが、前回は過去の南海トラフ地震より規模が小さかったのでエネルギーがたまりやすくなっている可能性がある」と注意を促し、2011年の東日本大震災と比較。南海トラフ地震による大きな被害が懸念される地域は人口が多く、予想される震源が海から近いため、津波の到達も早い可能性があると違いを説明し、「被害は東日本大震災よりかなり大きく、家具の固定や食料の備蓄、安否確認の方法など日頃から備えてほしい」と呼び掛けた。

第2部は、鳥羽真司県防災企画課長、宮脇寛和田辺市危機管理局長、仲山友章NHK和歌山放送局長、城下英行関西大学大学院准教授がパネリスト、山田尚幸和歌山地方気象台長がコーディネーターを務めたパネルディスカッション。

仲山さんは、東日本大震災の後、災害時のアナウンサーによる避難の呼び掛けが変化し、「東日本大震災を思い出してください」「高い所に逃げてください」など避難を強く促す表現になったことを紹介した。宮脇さんは「災害時は早期の避難が大事。情報をいかに分かりやすく市民の皆さまに届けるかが求められている」と話した。

南海トラフ地震への備えを議論するパネリストら

南海トラフ地震への備えを議論するパネリストら