日本初の民間ロケット発射場 串本に建設へ
キヤノン電子など4社でつくる民間ロケット会社「スペースワン」(東京)は26日、日本初となる民間ロケット発射場を串本町に建設すると発表した。小型ロケット専用の発射場で、小型衛星の打ち上げサービスを提供。2021年度中の運用開始を目指す。投資や雇用の効果に加え、ロケット産業が新たな観光資源となることにも期待がかかる。
スペースワンはキヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行の4社で昨年7月に発足。発射場に適した地域を探し、全国の自治体に候補地の情報提供を求めていた。
和歌山県はこれを受けて、県内立地に向けた誘致を推進。串本町は民間ロケット発射場誘致推進室を設置し、土地取得交渉など、事業の整備を進めてきた。半径1㌔圏内に民家などがなく、本州の工場から低コストで物資輸送できることなどの条件がそろい、県が「わかやま版PFI制度」活用で、32億円の無利子融資を準備したことも誘致を後押しした。
発射場の予定地は太平洋に面した田原地区周辺で、面積は約15㌶。全長約18㍍、約23㌧のロケットを打ち上げる予定。中・大型ロケットでは契約から打ち上げまでの期間は約2年だが、同社の小型ロケットは12カ月以内の「世界最短」、2020年代半ばには年20機を打ち上げる目標で「世界最高頻度」を目指すという。
国内でのロケット発射は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が鹿児島県の種子島と内之浦で実施している。
県では、同町が宇宙ビジネスの拠点になれば、県南部への誘客や活性化につながると期待。発射場建設による経済波及効果を10年間で670億円と試算している。
26日には県庁で記者会見が行われ、スペースワンの太田信一郎社長は「地球観測や情報通信を目的に、小型ロケットの需要は間違いなく増えていく。世界と肩を並べるつもりで事業を進めていきたい」と意気込みを語った。
仁坂吉伸知事は「とても夢のある話で、わくわくする。和歌山に新しい観光の要素が加わった。県民みんなで協力して、この素晴らしいプロジェクトを世界に届けたい」。串本町の田嶋勝正町長は「本州最南端の町から、日本初のビジネスロケット最先端の町へ、地域の宝物にしていきたい」、隣接する那智勝浦町の堀順一郎町長は「世界遺産とマグロと温泉のまちに、新たな魅力が加わり、地域の起爆剤になる」と期待を寄せた。