令和の時代を寿ぐ ―世界の平和を祈って
「令和」の時代がスタートしました。
退位された上皇・上皇后両陛下が、これまで「日本国民統合の象徴」としてのおつとめを果たされたことに対して、心から感謝申し上げます。上皇様の即位の際の「常に国民の幸福を願いつつ、日本国憲法を遵守し」というおことばの通りのなさりようでした。国内外の戦地への鎮魂の旅、そして被災地への慰問。日本の平成の御代が平和な時代であったことの有難さは、世界中で戦争や、内戦、テロの嵐が吹き荒れたことを思います時に、言葉では言い表せないほどです。
今上天皇が退位され、上皇となられるのは202年前の光格天皇以来です。しかし、譲位は皇室の歴史では珍しくありません。最初は女帝の第35代皇極天皇の譲位の時です。正式な上皇は、これも女帝の第41代持統天皇からで、歴代125代の天皇のうち58人は上皇となられています。神話の時代を除くと、過半数の天皇は譲位をされています。平成への御代代わりの時には、昭和天皇崩御の喪に服する必要がありましたが、皇室の伝統に戻ったおかげで、国民一丸となって令和元年を寿ぐことができます。
「令和」の典拠は、万葉集巻五、梅花の歌の序文(初春令月、気淑風和)とのことです。そのもとになったとされる中国の詩文集「文選」巻十五の張衡作「帰田賦」の句(仲春令月、時和気清)にも「令」と「和」が出てきます。中国古典の影響を受けた、まさにマルチな文化の結晶です。
当時のインテリには漢文学の素養が必須ですから、序文の作者が当時最先端の文化である「文選」に影響されるのは当然です。同じ漢字文化圏なので、出典が国書か中国の古典かという差異にこだわる意味はありません。
日本は古来より、外国の文化を取り入れることが得意でした。そのような多様性を重んじる国際的な感性こそ、今、私たちが生きている「分断の時代」に対抗する力になり得ます。こうした事実をすべて知った上で「令和」と決めた発案者の深い知性に敬服します。
新しい「令和」の時代が、平和と繁栄の時代となることを心から祈ります。それも、日本だけではなく、世界中から戦争と貧困がなくなるように、広い心と視野を持って、私たち日本人の力を結集していけますように。