かんきつ研究の拠点に 海南に常世館オープン
和歌山県海南市下津町の橘本神社(前山和範宮司)所蔵の、ミカンの起源に関する資料を展示する「常世館(とこよかん)」が、神社の駐車場内にオープンした。世界的なかんきつ分類学者・故田中長三郎氏の文献や博物学者・南方熊楠の手紙などの資料の他、最新研究も紹介され、規模は小さいが充実した展示内容となっている。
同館は木造2階建てで、2階に床面積約65平方㍍の展示室を開設。田中氏がかんきつ類の観察を記録した直筆のスケッチブックや多数の書籍、前山宮司の曽祖父、前山虎之助さんが田中氏や熊楠から送られた書簡などが並ぶ。2018年に発表されたアメリカ・スペイン・フランスの研究成果で、かんきつ類は約900万年前に中国やインド、ミャンマー周辺で誕生し、基本祖先種の中にタチバナが含まれていると解明された、最新研究の紹介もある。竣工祭は神社本殿で執り行われ、かんきつ研究家で田中氏に師事した海南市の森本純平氏(80)、京都大学名誉教授の北島宣氏、大阪大学総合学術博物館の特任講師、伊藤謙氏ら約20人が参加した。
前山宮司は「曽祖父と田中先生の交流の記録や森本先生からの寄贈品を中心に展示室を作りました。かんきつ資料の拠点になれば」とあいさつ。森本さんは「私が田中先生の最後の弟子で、資料館の完成は感無量です。皆さんには広報のご協力をお願いしたいです」と話していた。
竣工を祝うサクソフォンアンサンブルによる「みかんの花咲く丘」の演奏が花を添えていた。
入館料は、宮司らによる解説込みで大人400円、高校生以下300円。
土・日・祝日は完全予約制で開館し、平日は午後7時から9時まで。
詳しい問い合わせは前山宮司(℡073・494・0083、メールnrp47950@tulip.ocn.ne.jp)。