クルーズで地域振興 成長市場学ぶシンポ

 クルーズ船誘致による地域活性化について考える和歌山放送(中村榮三社長)の開局60周年記念シンポジウム「クルーズ新時代~和歌山県の地域振興を目指して~」が4日、和歌山市民会館小ホールで開かれ、約600人が講演などを通じて、拡大するクルーズ市場の現状や寄港地での経済効果などを学んだ。

 同社が主催する情報懇談会の第120回で、初めて県、市との共催となった。

 県内では、和歌山下津港、日高港、新宮港へのクルーズ船誘致が進められ、2018年度は過去最高の17隻が寄港。ことし8月には、和歌山下津港に11万㌧以上の客船として初めて、世界三大クルーズ会社の一つ、プリンセス・クルーズ所属の「ダイヤモンド・プリンセス」が入港を予定している。

 シンポジウムでクルーズ船の施策を担当する国土交通省技監の菊地身智雄氏は、クルーズ振興の現状について講演。世界のクルーズ人口は、2008年からの10年間で1620万人から2852万人と約1・8倍に増加し、特にアジアでは131万人から3・2倍の424万人に大きく伸びており、今後も発展が期待される市場であることを話した。

 日本では、クルーズ船での旅行は高級で費用がかかるイメージが根強いが、実際は同規模の旅行を他の手段で行うよりも低価格だという。

 クルーズ船では、飛行機のファーストクラスよりも広いキャビンで旅ができ、一流ホテルレベルの食事が毎日味わえ、船内で多彩なエンターテインメントを満喫でき、移動のたびに荷造りや運搬をする必要がないなどのメリットがある。

 横浜から長崎、韓国・釜山を巡る6日間の旅の場合、通常の旅行なら30万円以上の費用が見込まれるが、クルーズ船なら、上質な客室を使用するジュニアスイートで17万円程度、船の内側の客室では9万円程度との例が紹介された。

 日本でのクルーズ船の寄港回数や、クルーズ船で日本を訪れる外国人は近年急増。寄港地では市街地や観光地に乗客を誘導する観光ツアーなども企画され、乗客1人当たり数万円、トータルで数千万円から億単位の経済効果が生まれ、地域振興に寄与しているという。

 菊地氏は「ゲスト(乗客)の満足で地域も満足」が合言葉だとし、寄港地がその地ならではのおもてなしを実践し、地域の「稼ぐ力」を育てることが重要と指摘。「和歌山でも新しいクルーズの時代が来る。ゲストをしっかり満足させて、地域が果実を得ることを期待している」と述べた。

 この他、クルーズライターの上田寿美子さんの講演、仁坂吉伸知事や尾花正啓和歌山市長、プリンセス・クルーズの日本法人、㈱カーニバル・ジャパンの堀川悟社長らによるパネルディスカッションも行われた。

クルーズによる地域振興の事例や展望が紹介された

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