ベトナム技能実習生の現状 紀の川市から視察団

ベトナムを訪問している和歌山県紀の川市の視察団(団長=中村愼司市長)は3日目の29日、首都ハノイを訪れ、技能実習生として日本に渡る前の若者に、日本語やマナーなどを教える人材派遣会社・LOD人材開発㈱を訪問し、授業風景などを見学した。30日は政府施設でマイ・ティエン・ズン官房長官と会談した。

一行は29日午前に同国中部ダナンから空路で北部のハノイ入り。一行は、同社の教育施設において日本語を学んでいる女性たちから浴衣姿で歓迎を受けた。

同社幹部と視察団の意見交換では、同社のブー・コン・ビン会長が日本への人材派遣の現状を説明。約20年前から日本への人材派遣を手掛けており、現在同社で教育を受けたベトナム人4500人以上が日本で働いていること、和歌山の企業にも派遣の実績があることを紹介し、「日本で大いに勉強してスキルや人間性を磨いてほしい。質の良い人材の派遣を通じてベトナムと日本の架け橋になりたいと思っている」と思いを語った。

紀の川市側からは農業分野への実習生派遣についての質問が多く出た。中村市長は「来日して農業の仕事に就く実習生は農家出身か」と尋ね、同社幹部は「出身家庭はほとんど農業」と回答。日本へ派遣した実習生は果物や花きの栽培、養豚や養鶏などに携わっているとし、「農業が盛んな地域は都市部に比べ1時間当たりの最低賃金が約200円低く、なかなか難しい部分もある。農業分野の実習生は月給制と残業代の支払いを希望する人が多い傾向にある」と説明した。

今回の視察に参加している㈱濱田農園(和歌山県田辺市)の濱田朝康専務は、現在同社で6人のベトナム人技能実習生が梅の栽培に従事しているとし、「農作業の経験が豊富で手際が良く、真面目で地元住民とも積極的に交流している。非常に助かっているがこれからも来てくれるのか不安がある」と話し、LOD人材開発の幹部は「日本に行きたいと話す若者は多い。仕事の詳細な情報を積極的に提供していただけるとありがたい」と話していた。

ベトナム滞在最終日の30日、中村市長は、6月にフック首相夫妻と共に紀の川市を訪れたズン官房長官と再会。和やかに歓談し、記念品を贈り合い、昼食を共にした。

ズン官房長官(奥右から2人目)の歓迎を受けた一行

ズン官房長官(奥右から2人目)の歓迎を受けた一行