柏原文書が県指定文化財に 中世の村の実態
和歌山県教育委員会は8月29日、橋本市柏原(かせばら)区に鎌倉時代から蓄積されてきた古文書群「柏原文書」を県の有形文化財に指定した。自律的・自治的に運営されていた「惣村」である中世の柏原村の経済基盤の確立とその変遷を示し、学術的価値が高いとして保護を図る。これにより、県指定文化財は581件になる。
県教委文化遺産課によると、柏原文書は鎌倉時代の寛元2年(1244)から近代に至るまで蓄積されてきた数千点に及ぶ古文書群で、今回指定されたのは、同年から慶長2年(1597)にかけての年号のあるものを中心とした中世文書計140点。現在は「重要文書」と貼り紙がされた近代製の「黒箱」に納められている。
内容は、柏原村民の精神的・宗教的な中心として機能した西光寺に関係する土地証文が多い。
全140点のうち寄進状が25点、売券が17点あり、うち西光寺とその鎮守社・証誠権現社宛てのものが28点。上層農民を中心に、在地領主や寺僧などの多様な人々によって寄進・売却が行われ、中世の柏原村が独自の経済基盤となる惣有田(そうゆうでん)を形成していった経緯を示している。
さらに、「仏物(ぶつもつ)」として土地が寄進されたという記述から、個人に占有されることのない村の共有財産が形成された実態もうかがえる。
惣有田を経済基盤として自律的・自治的に運営されていた惣村は、近畿では鎌倉時代後半から南北朝時代にかけて、全国的には室町時代までに形成が進んだ。
柏原村は、全国的にも早い時期に惣村が形成され、惣有地の在り方を具体的に示す例であり、荘園や惣村の研究で広く取り上げられており、「柏原文書」の価値は高いと認められた。