大イチョウ樹勢回復へ 台風の塩害から一年

 和歌山県和歌山市の三年坂沿いにある和歌山城公園内にある高さ20㍍近い大イチョウが色づき、見頃を迎えている。

 これまで毎年、紅葉シーズンには見事な枝振りで黄金色に輝き、市民や観光客の目を楽しませてきた大イチョウだが、昨年は9月の台風21号の暴風雨で、太い枝が数本折れるなどのダメージを受けた。また塩害による影響も大きく、葉が縮れたり茶色くなったりして落葉し、辛うじて枝に残った葉も表面の傷が原因で光合成などがうまく行えず、きれいな発色につながらなかった。

 ことしは、昨年に比べると葉の数や色づきは回復しているように見えるが、台風以前の姿には程遠い。

 和歌山城の管理をする和歌山城整備企画課によると、台風後の樹木医による調査では「塩害による樹勢低下はあるものの、致命的な被害ではなく回復方向へ推移するものとみられる」と報告があったといい、同課は「今後も経過観察をしながら、状況の変化に応じて適宜樹木医への相談などを実施していきたい」としている。

 また、県立自然博物館の学芸員で植物担当の内藤麻子さんは「枝ぶりが大きく損なわれているので、以前に比べて樹形全体が輝くような印象はなく、寂しい状況。折れた部分から新しい枝が伸長すれば回復の見込みはあるが、元の状態に回復するには十数年は必要ではないか」と話している。

色づいた大イチョウ㊨(4日撮影、左は昨年12月2日の様子)