早期の許認可を 楠見メガソーラーで地権者
和歌山県和歌山市の楠見地区で計画されている大規模太陽光発電施設(メガソーラー)「和歌山平井太陽光発電事業」について、予定地の山林を所有する農事組合法人奥楠見花木生産組合(杉本匡総代)は17日、事業者の申請を受けた市の審議手続きが滞っているとして、早期に許認可の判断を示すよう、尾花正啓市長に要望した。
同事業は、同市平井、大谷、善明寺にまたがる65・94㌶に約12万7000枚の太陽光パネルを設置し、最大3万8500㌔㍗を発電するもので、2022年から20年間の稼働を予定。事業主体は、㈱SUNホールディングス(東京都)内に設立された和歌山太陽光合同会社。計画地のうち半分の33㌶を切り土や盛り土で造成し、雨水などをためる調整池を4カ所造るとしている。
要望書を提出した同組合は、1978年から同地区の山林を開発し、管理、保全を担ってきたが、組合員の高齢化と後継者不足により事業を継続できなくなり、2016年に解散を決議。その後の3年間は山林の管理が十分にできておらず、台風や豪雨の際に発生する倒木、河川への土砂の流入などの処理も困難な状態が続いている。
メガソーラー計画を受け同組合は6月、和歌山太陽光合同会社に対し、開発後も森林の維持、管理を行うこと、下流域の安全対策に万全を期し、開発後も安全が確保される運用を行うことを条件に、山林を売却することを決めている。
市は同社の事業申請書を7月9日に受理し、有識者らによる審議会などで審査している段階。同組合によると、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT法)の制度変更に伴い、同社は来年2月末までに着工届けを出すことができなければ事業から撤退する可能性も示唆しているという。
これらの状況を受け、要望書では、申請書受理から5カ月以上が経過し、滞っている手続きを早急に進め、早期に許認可の判断を下すよう求めている。
杉本総代(53)は「管理できなくなった山が放置され、近隣地域に災害などが起こることが怖い。事業者は太陽光事業をしながら山を管理するとしており、賛同している」と話し、尾花市長は「いたずらに審査を遅らせていることはなく、早く結論を出したい」とし、山林の管理の問題については「今回の審査とは切り離して、行政としても考えないといけない」と述べた。
楠見地区のメガソーラー計画を巡っては、開発に伴う森林伐採により土砂災害や河川の氾濫、景観の破壊などの懸念があるとして、同地区連合自治会は反対署名約1万5000筆を提出している。