知事賞に中尾さん 県歌人クラブ秋季大会
県歌人クラブ(杉谷睦生会長)の令和元年度秋季短歌大会がこのほど、田辺市で開かれ、知事賞に和歌山県和歌山市の中尾加代さんの作品が選ばれた。入賞歌は次の通り。
【県知事賞】
今しがた法事終えきて僧が駆く運動会は父親の顔
中尾加代(和歌山市)
【県議会議長賞・日本歌人クラブ賞】
児童らの絶えて久しき歩道橋はゆるゆる階段登る
埴岡佳津子(和歌山市)
【田辺市長賞】
家ごとに柱時計が居間にありその頃家族は寄り添いていた
上野山千矢子(有田市)
【田辺市文化協会会長賞】
あばらやと言えど良い事一つ有りどの部屋からも秋空の見ゆ
廣田明代(和歌山市)
【大会賞】
二段目は叩いてあける引き出しのくせも知りつつこの家に老いぬ
北山泰子(紀美野町)
【優秀賞】
コンサートにタクト振り出す際の際静寂の中に咳一つ聞く
谷口隆彦(有田川町)
情報と話しことばや雰囲気であなたといふ人組み立ててゐる
浦木逸子(橋本市)
多事あれど優先順位も決めかねて思考回路の溶ける猛暑日
安東知子(和歌山市)
空中を伸びて縮んで隊を編む鳥一群のショーを見て居り
西川幸代(田辺市)
呆けたることは幸せ異次元に生きる媼の無邪気な笑顔
小賀尚子(有田市)
丹念に生活をするそれだけで良いと思える自分になれた
平田良子(和歌山市)
手を合わせ初瀬の寺も急ぎ足スタンプラリーのごとき巡礼
北野惣一(有田市)
本堂に地獄絵を見るじっとみる五歳の孫は閻魔を睨む
坂本康寛(有田市)
モニターの呼吸が一本の線となりあなたに告げたき思い溢れる
島さつき(白浜町)
【県歌人クラブ名誉会長賞】
商魂の抜けてか細きは母の背にスローライフの車椅子押す
滝本のぶを(和歌山市)
【角川「短歌」賞】
茶柱の立つことはなしテイーバッグにくらしゆらゆら春の昏れる
榎本紀子(和歌山市)
【県歌人クラブ賞】
九軒の家のありようほぼ知りて回覧板に繋がる我ら
足立節子(和歌山市)