陸奥宗光の書簡発見 新知事に県政への助言記す

和歌山県和歌山市出身の政治家、陸奥宗光(1844―97)の新しい書簡が和歌山大学の紀州経済史文化史研究所で見つかった。県の新しい知事について、和歌山選出の衆議院議員だった児玉仲児に宛てた手紙で、外交史の功績を残した陸奥と和歌山の結び付きが分かる資料となっている。

同研究所が21日、発表した。同大学の藤本清二郎名誉教授によると、書簡は同大の前身となる旧県師範学校から所蔵していた中世から近世の資料の整理中に見つかったという。書簡を入手した経緯は不明だが、戦前には師範学校に保管されていたとみられる。

「和歌山新知事者、小生従来知人…」で始まる手紙は、当時新しく県知事になった沖守固(もりかた)の陣営に対し、陸奥が県政への助言をしたことを仲児に報告する内容。陸奥が農商務大臣を務めていた1892年1月21日に書かれたものと推定される。前知事の千田貞暁、その前の石井忠亮よりも沖のほうが仕事をしやすい相手であること、県政については県内務部長の秋山恕卿に相談するよう伝えたことなど、具体的な助言が記されている。

手紙が書かれた1892年は陸奥が治外法権の撤廃と関税自主権の一部回復を果たす2年前。外交関係の活躍を示す資料が多い一方、和歌山に直接的に関与していなかった陸奥が県政にいろいろと口を挟み、大臣をしながら地方ともつながっていたことがうかがえる。

書簡は今後、同研究所の成果を発表する速報展などで展示したいとしている。藤本名誉教授は「見つけたときは『まさかここにあるとは』と予想外だった。まだ誰も知らない新しい書簡。研究所として書簡の存在を広めるのは意味のあることになる」と話していた。

新たに見つかった陸奥宗光の自筆の書簡

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