加太の海をロボットで撮影 東大と地域活性化協

豊かな漁場を守る伝統的な漁法が続けられている和歌山県和歌山市加太地区で17、18日、東京大学生産技術研究所の巻俊宏准教授らによる海中・海底調査が行われ、友ヶ島周辺の海藻の生育状況や漁礁の状態などを水中ロボットで撮影した。映像は加太漁業協同組合に提供され、水産資源の維持に配慮した漁業の継続、発展のために活用される。

加太の漁協、観光協会、連合自治会でつくる加太地域活性化協議会と、加太分室地域ラボを置いている同研究所の連携による取り組み。

加太では、約130年にわたり続いているマダイの一本釣りをはじめ、刺し網や蛸壺漁など、魚と海中環境を傷つけにくく、豊かな漁場を維持する伝統的な漁法が受け継がれている。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」が国際的に広く知られるようになるにつれ、加太はその目標の一つ「海の豊かさを守ろう」を古くから実践する地域として注目度が高まっている。

今回の調査は、水産資源を枯渇させない、環境に配慮した加太の漁業の発展とともに、海洋ごみの対策につなげ、海洋環境の改善を図りたい漁協の要望を受けて実現。海中ロボットの研究、開発を手掛ける巻准教授が、研究の予備調査を兼ねて行った。

調査には同研究所の青木佳子特任助教、中本有美派遣連携研究員、同協議会の稲野雅則副会長らも同行。魚の多い岩場や漁礁など友ヶ島周辺の5カ所を巡り、「水中ドローン」と呼ばれる遠隔操縦ロボットを使い、最深で約40㍍の海底を撮影。漁礁にスズメダイなどの魚が集まり、海藻が生育している様子などが確認された。

調査を終え、地域ラボで撮影した映像をチェックした巻准教授は「海は非常にきれいで、ごみもほとんど見られなかった。今回の調査が、豊かな加太の海を維持することに貢献できたら非常にうれしい」と話した。

早ければ来年度にも再び調査を行い、自身が開発した、操縦を必要としない自律型のロボットを加太の海に投入したいとしている。

稲野副会長は、加太で関西国際空港の埋め立て土が採取された時代の調査データなどとの比較ができるのではないかとし、「加太は海を守る取り組みをずっと続けてきた。海の豊かさがデータとしても出てくることを期待している」と話していた。

撮影した海中の映像を確認する(右から)巻准教授、青木助教、中本研究員

撮影した海中の映像を確認する(右から)巻准教授、青木助教、中本研究員