水戸・和歌山の銘菓「のし梅」
前号では、茨城県の特産品である梅を用いた個性あふれる梅酒を取り上げた。他にも梅を使った郷土ならではの菓子が存在する。今週は水戸の土産品として知られる「のし梅」を紹介したい。
のし梅は、梅をすりつぶし、黒糖や水飴などの砂糖と寒天を練り込み、板状に薄くのばして乾かせ竹の皮で包んだ菓子。梅の甘酸っぱさと香り、弾力のある食感が特徴。
もともとは、山形藩の医師が長崎に遊学の際、中国から伝来したとされる梅を用いた「気付け薬」として考案し、山形へ持ち帰ったとされ、現在も山形県の菓子として親しまれている。
梅を加工し土産品としての価値を付け販売しようと、梅の名産地である水戸や和歌山に製法が広まり、現代では水戸銘菓として知られるようになった。水戸では老舗の菓子店が製造、販売し、主要駅の売店などで広く取り扱われている。茶会で出される水戸ならではの菓子で、夏場は冷やして食べるのがお薦め。
和歌山県でも、梅の産地であるみなべ町や上富田町の食品メーカーで製造されている。水戸との違いは南高梅を使用していることに加え、味が異なる複数の種類が存在すること。梅の風味がメインとなるプレーンタイプと、かんきつの風味を楽しむため柚子の皮などを混ぜたタイプ。梅花の色を表現しようと桃の色素を加え赤く染めたものや、抹茶を混ぜたものなどさまざま。他の特産品とのコラボレーションで、のし梅の楽しみ方を増やす工夫がみられる。
同じ名称でも御当地により進化を遂げる銘菓「のし梅」。地域で異なる味わいを食べ比べてみてほしい。
(次田尚弘/水戸市)