関西電力特集記事

4月、関西電力送配電が誕生

 

電気事業法の改正に伴い、関西電力の送配電部門は4月1日、関西電力送配電㈱となり、発電・販売部門から分離する。現在の関西電力和歌山支社は送配電の支社となり、ライフラインである電力を地域に安定供給する役割に一層力を入れ、台風などの災害時のより早い復旧や、地域社会に貢献する新サービスなどに取り組んでいく。近藤忠司支社長に分社化の意義や展望を聞いた。

安定供給へ災害対応など強化

 

分社化を機に一層の地域貢献を目指す近藤支社長㊧(右は本紙・津村周社長)

分社化を機に一層の地域貢献を目指す近藤支社長㊧(右は本紙・津村周社長)


分社化は、3段階で進められてきた電力システム改革の最終段階。第1段階は2015年4月、広域的運営推進機関が設立され、全国規模での送電インフラの強化や、各電力会社の供給区域をまたぐ広域的な電力流通をより円滑に行うことが可能となった。
第2段階は16年4月に行われた電力小売の全面自由化。さまざまな会社から電気を購入できるようになったことから、新たに参入した会社も鉄塔や電柱などの送配電設備を公平に利用できるよう、中立性を確保することが求められ、送配電部門を法的に分離するために今回の分社化が行われる。
和歌山支社を送配電の支社とすることについて近藤支社長は「災害時の復旧を早くし、地域社会のお役に立ち続けるために、自治体や地域の皆さまとの連携をさらに深くするよう体制を整えたもの」と説明する。
災害時の復旧を迅速化する取り組みは、18年9月の台風21号が大きな教訓となっている。近畿のほぼ全域を暴風域に巻き込んで縦断した台風により、関西電力管内は最大約168万軒(和歌山県内24万軒)の停電が発生。1日後に81%、3日後には95%が復旧したが、山間部などの復旧は難航し、完了は16日後(県内は11日後)だった。
従来から導入していたのが「配電自動化システム」。停電の原因箇所を自動的に検出し、故障していない区間から自動的に電気を回す仕組みで、通常は作業員が出向いて事故原因を調査の上、復旧作業を行い、正常な状態に戻す。しかし、台風21号では停電箇所が多く、復旧作業が遅れ、長期間の停電に至った。
その反省から、現在はまず被害全体の概要を把握する調査班を最大限投入し、復旧戦略を立てることにしている。
より効率的に調査するため、スマートフォンで被害現場の写真を撮影し、社内システムにアップロード。写真データには位置情報が含まれているので、被害の場所や状況をタイムリーに把握し、情報共有ができる。
他の電力、関係会社などと復旧への応援体制の整理、強化も行っている。
自治体との連携では、県と19年4月に協定を締結し、停電復旧の際に支障となる樹木や土砂などの障害物の除去を連携して行えるようになった。管内の他の自治体とも個別に連携に向けた協議を進めている。
実際に停電が発生した場合に少しでも早く復旧できるよう、職員の技術力を高める訓練なども継続して行っている。他の電力会社では、復旧作業を外部化している場合が多いが、関電では高い技術力を自社で育成、維持し、より災害に強い体制づくりに努力している。
また、膨大な送配電設備を保有するインフラ企業として、設備の維持管理は重要な業務となっている。目視が難しい鉄塔などは、ドローンを活用して空中からの映像で異常がないか確認している他、AIを使った故障予測システムを開発するなど、信頼性とコストの両立を図って取り組んでいる。

4月1日に分社化される関西電力送配電和歌山支社

4月1日に分社化される関西電力送配電和歌山支社


 

電柱で見守りシステム 地域貢献の新サービス続々

送配電事業の新たな可能性の追求も進められている。IoTやAIなどのデジタル技術を生かし、「さらに効率化できないか、もう一歩進んだサービスに生かせないかという観点でさまざまな検討をしている」と近藤支社長は話す。
現在、家庭の電力メーターは通信機能付きのスマートメーターに取り替えが行われており、県内は80%を超え、あと2~3年で完了する。スマートメーターを活用すれば、各家庭でどの時間帯にどれだけ電気を使用しているか把握でき、家庭での省エネを進めたり、時間帯で単価が違う電力会社の料金プランのお得度を比較したりできる。
また、停電発生時にどの家庭で停電しているのかすぐ分かるシステムの開発も行われており、早期の復旧に役立つようになる。
さらに近藤支社長は「技術が進むと、家庭の電力消費量のコントロールや、自然エネルギーのフル活用など、環境負荷の低減にも寄与することができる」と考えている。
景観面や災害時の危険性などからマイナスイメージもある電柱を、子どもや高齢者の見守りに生かす新サービスも生まれている。
子どもや高齢者が携帯する端末の電波を検知するセンサーを電柱に設置することで、移動経路などの位置情報を確認し、登下校時などの見守りに役立つ。
また、電柱を宅配ロッカーの設置場所とすることで、急増している宅配物の再配達を低減する全国初の取り組みも始まっている。

県内には、火力・水力発電所に加え、橘湾石炭火力発電所(徳島県阿南市)で発電した電力の一部を関西へ送電する設備の一つ、紀北変換所などの重要な施設が立地する。
近藤支社長は、18年6月に和歌山に着任して以来、住民から停電時の復旧に対する励ましや復旧後の感謝の言葉を数多く聞いた一方、苦情の声も受け止めてきた。停電が発生すると、電気製品だけでなく、電力を必要とする水道やガスも使えなくなることから、ライフラインを預かる企業の責任の重大性を改めて痛感している。
「今後も関西電力グループ一体となって安全・安定供給に努め、『power with heart』の精神で、和歌山県のさらなる発展に貢献したい」と話し、一層地域に根差した企業活動を目指している。

県内には電力の安定供給を支える大型設備が数多くある(海南港変電所)

県内には電力の安定供給を支える大型設備が数多くある(海南港変電所)

鉄塔など高所の設備管理にはドローンが活躍

鉄塔など高所の設備管理にはドローンが活躍


 

停電情報をアプリで

昨年7月、関西エリアの停電情報をリアルタイムで知ることができる無料アプリ「関西停電情報」の運用を開始した。
アプリをダウンロードすると、プッシュ通知を受け取る地域を最大10カ所まで登録でき、自宅の他、離れて暮らす大切な人の住所などを設定しておくと、停電の発生や復旧などの通知が届くようになる。
停電情報は、府県、市区町村、地区ごとに見ることができ、地区まで絞り込むと、復旧作業の進捗状況や復旧見込み時間などの詳細が確認できる。
現在、県内で約2万人が登録しており、さらに多くの県民に利用を呼び掛けている。
また、停電時の対応では、コールセンターの受け付け体制を強化し、昨年9月にはAIを活用した停電情報自動応答システムの運用も開始している。

停電情報が分かる便利な無料アプリ

停電情報が分かる便利な無料アプリ