建設現場から、施設への思い 海南ノビノス⑤
現場監督の玉井啓博さんが最初に設計を見た印象は「大きな難しい建物だな」だった。天井は高い吹き抜けで、斜めの壁、コンクリートは打ちっぱなしなど、複雑箇所も多かったという。
旧市役所の解体から基礎工事、それから外装、内装と出来上がっていく。海南の土地は砂地で海抜が低く、基礎工事の段階で水が流れてくることも少なくない。ノビノスも海抜1㍍ほどしかないため、基礎工事の際には流れ出る水を抜く作業を行った。1階は鉄骨鉄筋コンクリート造り、建物と擁壁、非常階段とそれぞれの間に隙間を設け、地震など災害に耐えられる丈夫な建造物となっている。
建設工事が始まったのは2018年の10月。オリンピックの建設ラッシュにより鉄骨の納品が遅れたり、ボルトが足りなかったりとアクシデントも続いた。それでも工事は着々と進み、玉井さんは無事にできてよかったと胸をなで下ろしたという。
警備員の田中秀夫さんは、ノビノスの建設過程を約2年間間近で見てきた。少しずつ出来ていく建物を日々眺めていたが、大屋根が取り付けられ、ガラスがはめられた時には完成が近づいている実感が湧いた。工事中にも「何の工事してるの?」と聞かれることがあったが、ことし1月に囲いが外され、建物の全体が見えるようになると、通りかかった人から「大きい建物やねぇ」と声を掛けられることも多くなったという。
玉井さんは「内装もカラフルで、本以外にも遊具があるので、いろいろ楽しんでもらえたら」、田中さんは「お年寄りの方には散歩の途中で休憩できる場所が無いと言っている人もいた。ここが憩いの場になれば」と約2年間携わってきたノビノスに思いを寄せた。