ノッカーはマネジャー 海南高校の洞さん
高校野球の全国選手権和歌山大会に代わる独自大会「2020夏高校野球和歌山大会」の開幕まで、2週間。「最後の夏」に強い思いを懸けるのは球児だけではない。海南高校硬式野球部マネジャーの洞(ほら)朋代さん(3年)は、選手にノックを打ちチームの守備力向上に貢献している。もともと野球の経験はなかったが、昨夏に自らノッカーを志願し一からノックの技術を磨いてきた。「和歌山で1番になってほしい」との思いを胸に連日ノックを打っている。
「いくよ~」。広いグラウンドに、元気な掛け声とノックバットで硬球をたたく乾いた音が響く。大会を控え、選手たちの練習も熱を帯びてきている。
海南市出身の洞さんは市立内海小、市立第三中を経て同高に進学。中学時代はバスケットボール部で野球に強い関心はなかったという。野球部に入ったのは同じ中学出身の先輩マネジャーから誘われたのがきっかけで、「練習の雰囲気がとても楽しそうで見学したその日に入部を決めました」と振り返る。
入学後は掃除や選手が口にするおにぎりや飲み物の準備などに一生懸命取り組む日々が続いたが、1年の秋ごろにあった練習試合で対戦校の女子マネジャーが試合前にノックを打つ姿を目撃し、「かっこいい」と憧れた。昨夏の和歌山大会で初戦敗退を喫し新チームが始動した直後、上地一生監督(32)に練習でノックを打ちたいと志願した。
洞さんはノックを打ち始めた当初を「空振りばかりだった」と振り返る。初めは打撃用手袋を着けずに素手で打っていたこともあり、手の皮がめくれたり、水ぶくれができたりすることもあった。ネットに向かって球を打つ練習などを繰り返すうちに空振りが減り、鋭い当たりを飛ばせるようになった。現在は主に朝の自主練習で内野手相手にノックを打ち、外野へのノックも練習中。ノックの中でも特に難しいといわれるキャッチャーフライも「真上に高く上げるのはものすごく難しいけど、打てるようになりたい」と意欲を見せる。
洞さんが手にしているノックバットと打撃用手袋は選手たちからプレゼントされたもの。「選手から『ノック打って』と言われるのがうれしい」と語る。上地監督も「すごく努力する姿がチームにも良い影響を与えている。最初の頃とは見違えるよう。安心して見ていられる」と成長ぶりを評価。「打球の強さを意識的に変えたり、打球にスピンをかけたりすることができればもっとうまくなる」と期待を寄せ、「マネジャーもできるだけグラウンドに入って選手と同じ練習に参加する機会を持てたら」と話す。
組み合わせ抽選では、23日の第2試合で粉河高と対戦することが決まった。洞さんはことしのチームについて「投打にレベルが高く、練習熱心でオンとオフの切り替えもできる。粉河はよく打つイメージがあるけど勝って、和歌山で1番になってほしい」と願う。洞さんの最後の夏がもうすぐ始まる。