避難所間仕切り提供 和市と大和リース協定

災害発生時に開設される避難所で課題となる、プライバシーの保持や新型コロナウイルスの感染リスク軽減に役立てるため、和歌山県和歌山市は27日、紙と布を使った「簡易間仕切りシステム」の無償供給を受ける協定を、大和リース㈱(大阪市)と結んだ。同社が2018年から全国の10自治体と進めてきた活動の一環で、和歌山市との協定が最後の10カ所目の取り組みとなった。

同社が供給する簡易間仕切りシステムは、建築家の坂茂さんが代表を務めるNPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)が考案。筒状の紙を枠とし、誰でも簡単に組み立てられ、カーテンとなる布の開閉でプライバシーを確保し、飛沫(ひまつ)の拡散防止にもつながる。

東日本大震災や熊本地震などで活用され、現在も、今月の豪雨で大きな被害を受けた熊本県人吉市の避難所などで使われている。

同社はVANの活動に共鳴し、18年3月に協定を締結。これに基づき、緊急時に簡易間仕切りシステムをより迅速に供給するため、各自治体との連携を進めてきた。三重県桑名市、兵庫県南あわじ市など、南海トラフ巨大地震の被害が想定される太平洋岸地域を中心に声を掛け、和歌山県内では、最も人口が集中する和歌山市に白羽の矢が立った。

機材1セットで幅、奥行き、高さとも2㍍の空間を仕切ることができる。協定により、同社は100セットを自社で保管し、災害時や防災訓練の際など、市の要請に応じて必要な場所に搬入する。

協定締結式は市役所で行われ、同社和歌山営業所の佐藤昭二統括所長と尾花正啓市長が協定書を交換した。

尾花市長は「災害時は逃げることが大切だが、コロナの関係で避難所は『密』を避けなければならない。間仕切りができるセットは、感染防止やプライバシー保持にも役立ち、心強い」と協定締結に感謝した。

佐藤統括所長は「毎年のように災害が発生する中、コロナの影響で避難所の在り方も議論となっている。間仕切りシステムは、災害に備える選択肢になる」と話していた。

協定書を手にする尾花市長㊨と佐藤統括所長

協定書を手にする尾花市長㊨と佐藤統括所長