外国人被災者に対応 避難所巡回など訓練
和歌山県国際交流協会は17日、災害発生時に外国人の被災者に対応する「災害時多言語支援センター」の設置、運営などの訓練を、和歌山ビッグ愛(和歌山市手平)と御坊市中央公民館(同市薗)で行った。県や市町村職員、外国人住民ら約50人が参加し、避難所での被災状況や相談の聞き取り、ビデオ会議システムを使った遠隔通訳などに取り組んだ。
日本で生活する外国人が増加傾向にあり、県内在住者は2019年12月現在で7169人。日本の災害事情や防災知識に詳しくない人もみられ、地震や台風などの災害で外国人が被災者になることも増えており、同協会は昨年から訓練を始め、今回が2回目となった。
災害時多言語支援センターの重要性や現状、遠隔支援の課題などを講義で学んだ後、県南方沖を震源とする巨大地震が発生した想定で、センターの設置・運営、避難所巡回などの訓練を開始。
講師を務めた横須賀市産業振興財団常務理事の松本義弘さんは、避難所を巡回し、外国人に対応する意義を、「あなたはこの避難所にいることができる」と伝えること、不安を聴き取って安心を届けること、外国籍住民の三つの壁(言葉、制度、心)を薄く低くすることにあると説明した。
和歌山ビッグ愛には同協会や県国際課の職員、近畿圏内の地域国際化協会の職員らが集まり、8階の県国際交流センターに多言語支援センターを開設。ビデオ会議システムを使った遠隔通訳による被災外国人の支援、災害関連情報の翻訳などに取り組んだ。
1階や御坊市の会場では、避難所に外国人が避難しているとの想定で、市町村職員が巡回訓練を行い、避難者に避難した理由や現在の体調、持病の有無、困り事などを尋ねた。
薬が欲しい、家族と連絡を取りたい、アレルギーがあるなど相談内容はさまざまで、日本語でのやり取りが困難な場合は、パソコンなどで多言語支援センターと接続し、遠隔通訳を介して聴き取りを実施。県では英語、中国語、ベトナム語、フィリピノ語の4言語に対応し、他の言語の場合は、近畿圏内の地域国際化協会が支援した。
県国際交流協会の出口博之事務局長は「和歌山はいつ災害が起こるか分からない地域。外国人への支援ができることは、社会的弱者への対応ができることにもつながる。旅行中の外国人が被災する事態にも備えなければならず、訓練で課題を見つけ、フィードバックしていきたい」と話していた。