まるで版画 近代美術館の手作りスタンプ
和歌山県立近代美術館(和歌山市吹上)で行われているスタンプラリーの企画が6年目を迎えた。展覧会に足を運ぶごとに押される手作り印は当初から「レベルが高い」と話題だったが、「単なるスタンプでなく版画の領域」と美術ファンをうならせている。
制作するのは受付のスタッフで、展覧会ごとに図柄を考案。メンバーが入れ替わりながらも活動が引き継がれ、作ったスタンプは50個近くになった。
スタンプ用の消しゴムをデザインカッターで彫るが、細く複雑な線などを切り込む緻密な作業。形もさまざまで、どの部分を図柄にするかセンスが光る。最近は陰影をつけるため2版で仕上げるタイプも登場し、技術に磨きがかかっている。
スタンプラリーのきっかけは「行かない」展覧会を「行きたい」に変えたいとの思いから。同館では収蔵品を中心に紹介する展覧会も多いため「知っている作品ばかり」と思われがちで、同館の青木加苗学芸員は残念に感じていたという。
美術作品は切り口やテーマを変えれば違った印象にもなり青木学芸員は「『お目当て』でなく、あまり興味がなかった展覧会でも、『行ってみると面白かった』と感じる、そんな作品との出合いを提供したい。毎回来てもらう仕組みをつくりたかったんです」と話す。
来館者には集めたスタンプの数によって、手作りの缶バッジやマグネットをプレゼント。幅広い世代に人気で、スタンプを楽しみに毎回展覧会初日に駆け付けるファンもいるそう。
青木学芸員は「集めることを目的に来てもらうのも大歓迎。スタンプの図柄の作品が展覧会のどこにあるのか、探してみるのも楽しいかもしれません」と呼び掛けている。