杉原さん、河内祭保存会に 文科相表彰
芸術・文化の振興や文化財の保護などに尽力した個人、団体に贈られる2020年度地域文化功労者文部科学大臣表彰に、和歌山県内から、音楽家、合唱指導者の杉原治(いさお)さん(86)=和歌山市=と、古座川河内祭(こうちまつり)保存会=串本町=が選ばれた。表彰式は1月24日に京都市内で行われる。
高校でオペラ演奏 各地の合唱団育成
杉原さんは1934年(昭和9)、七川村(現古座川町)生まれ。52年に和歌山大学学芸学部音楽専攻に入学し、声楽を学び、卒業後は県立高校音楽科教諭、県教育委員会指導主事などを歴任し、94年に向陽高校校長を最後に退職した。
赴任先の高校で合唱部を指導し、中でも桐蔭高校では、音楽部と音楽選択の生徒、教員、父母ら総勢300人の大合唱とオーケストラによる原語のオペラ合唱公演を県民文化会館大ホールで行い、初回から第11回まで指導した。
60年からは和歌山市民合唱団の指揮者となり、バッハ、ハイドン、モーツアルト、フォーレなどの合唱曲や團伊玖磨作曲の合唱組曲「紀州路」など邦人の合唱作品、ふるさと和歌山の歌など数多くの合唱を指揮。毎年の定期演奏会は第4回から指揮を務め、2017年11月の第60回公演で57回目を迎え、その功績で現在は「名誉指揮者」となっている。
この他、幅広く県内の合唱団を育成するなど、音楽文化の向上と振興に尽力してきた多大な功績に対し、サントリー地域文化賞、県知事表彰、県文化功労賞、和歌山市文化賞などが贈られている。
熊野の信仰や捕鯨 伝統を保護し継承
古座川河内祭保存会は、国の重要無形民俗文化財「河内祭の御舟行事(みふねぎょうじ)」の保護団体であり、前身である古座神社から数えて50年以上の活動歴を持つ。
河内祭は、熊野地域に古くから伝わる自然崇拝を受け継ぐとともに、精進潔斎(しょうじんけっさい)をして神の使いを務めるショウロウと呼ばれる3人の子どもの神役など、伝統的なしきたりを数多く残し、地区ごとに豊作・豊漁・海上安全などの祈りを河内島にささげることに特徴がある。
また、江戸時代から沿岸捕鯨で栄えた古座の漁師たちが、鯨舟に祭り幕や幟旗を飾り、華麗な神幸船とした「御舟」や、獅子舞を乗せた「獅子伝馬(ししてんま)」、競漕を行う「櫂伝馬(かいてんま)」など、古座川を舞台にした水上渡御(とぎょ)が祭りの見どころとなっている。
保存会は長年にわたり河内祭の運営に携わり、関係する地域や団体をまとめ、伝統文化の保護と継承、地域の活性化などに大きく貢献している。