国が前面に出た復旧を まずは交通インフラの回復

 台風12号による未曽有の大災害で県内で多数の尊い命が失われました。 亡くなられた方に心から哀悼の誠を捧げるとともに、 被災された皆さんに心からお見舞いを申し上げます。  

 私は直後から古巣のNTTに連絡して固定電話、 携帯電話の早期復旧や臨時通信手段の確保に取り組んできた。 また被害を受けなかった紀北の支持者からのミネラルウォーター等の取り次ぎも行い、 断水に苦しむ地域に届けるといったことも行ってきた。

 ただ現地の視察だけは自粛してきた。 政府の災害担当の役職にない一国会議員が現場に入ってもできることは限られている。 議員が現地に入るだけで、 必死に対応に当たっている行政関係者の足手まといになりかねない。 こういう災害が発生した時には視察に来た大臣等の後ろに立って必死にマスコミのカメラに映り込もうとする政治家がいるが、 見苦しいパフォーマンスだと言わざるを得ない。

 発災から数日たって、 野田首相や谷垣自民党総裁の視察を受け入れることができるようになったことを受け、 私も現地入りすることにした。 現地自治体の担当者に迷惑を掛けないように配意し、 一部を除き地元の県議、 市町議や後援会幹部に案内してもらうようにした。

 9日から11日まで3日間かけて、 那智勝浦、 新宮、 旧熊野川、 古座川、 田辺、 日高川、 旧本宮、 旧龍神の被災地をみっちりと回らせてもらった。 また18日にはみなべ町の状況も視察した。

 あまりの惨状に言葉も出なかった。 山が頂上からえぐり取られるように崩落し、 住民が行方不明になっている現場にも入った。 家の上に家が載っていたり、 崖の中腹に車がぶら下がっていたり、 私がよく通った森林組合や道の駅が建物ごとなくなっていたり、 橋が落ちていたり、 まさに 「山の津波」 におそわれたという状況であった。 東北の被災地を何度も訪問しているが、 今回の被災地も同じような光景だ。

 今回の被災地はすでに過疎化に苦しんでいる地域である。 20日に激甚災害指定が閣議決定されたが、 従来の激甚災害対策の枠組みには限界がある。 甚大な被害を受けた過疎地域の復旧のために補助金のかさ上げや無利子融資を提供しても受けるだけの基礎体力がない。 東日本大震災の被災地と同じように国が前面に出て復旧を行っていくしかない。

 また、 これからは家屋に積もった泥や瓦礫 (がれき) の清掃・撤去を行う段階に入ってくるが、 やはり民間ボランティアの協力が不可欠だ。 すでにボランティアセンターが開設されているが、 東北で活躍した有力なボランティア団体等を受け入れていくことも重要だ。

 深刻な被災状況については枚挙にいとまがないが、 今後の復旧や生活、 地域経済への影響を考えた場合に深刻なのは幹線国道、 鉄道が深刻なダメージを受けていることだ。 崖崩れや路面崩落により国道168号は緊急車両以外通行できない部分がある。 国道311号の滝尻王子付近は土石流で埋まって完全に寸断されている。 紀勢線はいまだに鉄橋の復旧が進まないまま不通区間がある。 まずは交通インフラの完全復旧を急ぐことが重要で、 このことが他分野での復旧のスピードアップにもつながり、 紀南の生命線である観光産業の復興にもつながる。

 和歌山県にとっては大きな試練となった今回の災害であるが、 県選出の参議院議員として復旧・復興に全力で取り組んでいきたい。