生き生き、社会に恩返し 透析36年・川島さん
36年近く透析治療を続けながら、活動的に充実した毎日を送る人がいる。和歌山市北島の川島英治さん(60)は、自ら立ち上げた演舞のボランティア団体で、介護施設などで公演。健康へのこだわりから思わぬかたちで起業も果たし、新たな夢も広がっている。川島さんは「与えられ、生かせてもらっている分を、微力ながら少しずつでも社会にお返しできれば」と話している。
透析治療は、週に3回、1回につき5時間。日常生活や体への負担も大きいが、命をつなぐ大切な時間という。
川島さんの腎機能の低下が分かったのは、25歳のとき。体の不調を感じて仕事場で倒れた。
当時は専門医も少なく、治療も手探りの状態で、妻のはつみさん(59)は「何とか少しでも長生きしてほしい」との一心だったという。
6年ほど前には合併症から、一時ほぼ寝たきりの介護が必要な状態に。仕事も退職を余儀なくされた。看護師だったはつみさんは仕事を辞め、英治さん専属の看護師になった。
壮絶な闘病生活を支えていたのは、家族はもちろん、自分に負けたらあかんという強い思い。「受け身の透析ではなく、攻めの透析を心掛けてきた」と川島さん。病と向き合い、常に新しい情報を求めて勉強会に参加するなどしている。「どん底を味わったから、生きる喜びがある。何か、自分が生かされているように思うんです」とにこやか。
透析を導入した頃、担当の医師から「当たり前に思わず、お礼の意味を込めて社会貢献しやなあかんね」と言われたのが忘れられず、周りの人に喜んでもらえることはないかと考え続けてきたという。
その一つとして、2年半前に、高齢者施設を訪れて楽しい演舞を披露する「劇団桜吹雪」を立ち上げた。月に1度、マジックや踊り、南京玉すだれなど、多彩な芸をこなすメンバーをまとめ、司会の他、歌謡ショーもこなす。
また思わぬ出来事も。健康回復へのこだわりから生まれたコーヒー豆が、ある人の目にとまり、その独自の製法で特許を取得。ことし1月にはコーヒー豆製造販売の会社を立ち上げるまでになった。
全国に約30万人いるとされる人工透析患者。最も長い透析歴は43年という。
「同じように透析を続ける人にも、力になれば。目指すは、透析歴日本一」
それは、同時に世界一を意味する。