幽玄の世界堪能 日前宮薪能に800人

 和歌山市秋月の日前宮(紀俊武宮司)が主催する、和歌山の夏の風物詩、第38回「日前宮 薪能」が26日に同境内であり、約800人が、かがり火に照らされた舞台で演じられる幽玄の世界を味わった。

 厳かな火入れの神事の後、観世流舞囃子「小袖曽我」では小林慶三さんがシテを務め、和大付属中学校の宮楠昂之君と、謡と鼓に合わせて勇ましく舞った。

 同宮では初めての演目、茂山千三郎さんらによる大蔵流狂言「柿山伏」と、分林(わけばやし)道治さんがシテを務める観世流能「弱法師(よろぼし)」を上演。観客は暑さを忘れ、狂言のおかしみと能の優美な世界を楽しんだ。

 「弱法師」では、盲目の乞食、俊徳丸と、理由あって彼を捨てた父親との再会、和解が描かれ、このほど国の伝統工芸品に指定された橋本市の「紀州へら竿」も舞台で使用された。

 同市西庄の河野雄之さん(69)は「毎年楽しみにしています。今回の能は悲しく深い思いが伝わってきました」と話していた。