8月から「新高速乗合バス」 新制度、事業者の創意工夫が鍵に
前号から関東方面と和歌山を結ぶ夜行高速バスについて紹介している。
現在、夜行高速バスには、乗合バス事業者が道路運送法に基づき利用者を運ぶ「高速乗合バス」と旅行業者が旅行業法に基づき貸切バス事業者のバスを貸切で運行する「高速ツアーバス」の2種類がある。
国土交通省は安全対策の強化を目的に、これらを1本化した「新高速乗合バス」という新たな制度を8月1日にスタートさせる。
◇ ◇
午後8時過ぎの和歌山駅東口。駅前から少し離れた歩道に旅行鞄を持った若者が集まり、ツアーバスの到着を待っていた。東京方面行きでこの日の設定料金は片道約4000円。
新制度への移行で変わる大きな違いは2点。利用者は道路運送法に基づき乗合バス事業者へ運賃を支払う(旅行業者へ料金を支払うツアーバス制度は廃止)。乗合バス事業者はバス停留所を設置する(適当な路上で乗降させてはならない)。
従来の乗合バス事業者の制度を踏襲する形だが、運行計画や運賃・料金の事前届出期間が30日前から7日前へ短縮。固定運賃から、需要予測により運賃を変動できる幅運賃の設定など、ツアーバスの長所とされた供給量の調整や価格設定の柔軟性を残している。従来の貸切バス事業者も、安全面の要件を満たし国土交通大臣の許可を得れば、一定割合で乗合バス事業者から運行を受託することもできる。
しかし8月以降に運行される高速乗合バスの本数は、現在のツアーバスの本数と比べ大幅に減少。小規模な貸切バス事業者の廃業も少なくない。最安の運賃も現在より2割程度上昇するなど、ツアーバスの利用者にも多少の負担はある。
バス事業者は決して揺るいではならない安全性を確保し、定められた制度のなかで、サービス向上や旅の訴求など、創意工夫が必要になるだろう。容易なことではないが、より安全で快適に多くの旅行者を和歌山へ招き入れてほしい。(次田尚弘/和歌山)