創立95周年「観諷会」 6日、謡と舞の会
和歌山の能楽文化を育て守り、ことし95周年を迎える「観諷(かんぷう)会」が6日、和歌山市の県民文化会館小ホールで記念の「謡と舞の会」を開く。主宰する観世流能楽師の小林慶三さん(82)は、「栄枯盛衰さまざま時代を経る中、この和歌山でここまで続いてきてくれたのはありがたいこと。若い人も増え、一点通過の記念会をにぎやかに迎えられそうです」と話している。
13歳から94歳まで約30人が舞囃子、仕舞、素謡、独吟などを披露する。
「観諷会」は大正9年、小林さんの父で観世流能楽師の小林憲太郎師が創立。低迷していた和歌山謡曲界、能楽界の復興の中心を担い、現在まで文化庁認定の重要無形文化財保持者の慶三さんが引き継いできた。
小林さんが後進育成にと、数年前から力を入れるワークショップをきっかけに能を始めた十代の中高生や二十代の若い芽も育っている。「10年ほど前は高齢な方ばかりで、若い人は全くいなかった。華やかになり、活気が出てきました」
小学校2年生で能を始めた和大付属中学校新2年生の宮楠昂之君(13)は、今回舞台で初めて謡を披露する。小林さんと連吟「鶴亀」に挑戦。宮楠君は「まだ覚えていない部分もあって完成度は60%」と苦笑い。仕舞「羽衣」では「見た人に『自分もやりたい』と思ってもらえるように舞いたい」と稽古に励む。
60年以上にわたって舞台に立ち続け、昨年1月に脳梗塞で倒れた楠山弘子さん(83)は、1年2カ月ぶりの舞台復帰。指先の神経の麻痺(まひ)で一時は扇も持てないほどだったが、少しずつ使えるようになり、周囲も驚くほどの回復ぶりという。
夫の繁さん(84)は「『仕舞を舞いたい』という強い気持ちが、引っ張ってくれたように思います」と話す。弘子さんは「昔のようにいかず、言葉も思うように出なかったりで不安もありますが、まずは第一歩を」と笑顔で話している。
披露するのは仕舞「胡蝶」。先日の稽古では小林さんから「トンボのように元気がありすぎ。もう少しふわふわと飛ぶように」とユーモアたっぷりに指導を受けていた。
6日は94歳の有本豊三さんの独吟「春日竜神」、楠山繁さんの仕舞「松風」、安田さやかさんの舞囃子「敦盛」などの他、小林さんが番外仕舞「合甫(かっぽ)」を披露する。
午前10時から午後5時ごろまで。問い合わせは観諷会(℡073・422・9304)。