和歌山県出身者が「まちづくり」 崎山治郎右衛門の功績

 前号では、和歌山から伝わったしょうゆ文化が息づく千葉県銚子市と、しょうゆを染み込ませて作った「ぬれせんべい」を取り上げた。「ぬれせんべい」で一躍有名になった地元の鉄道会社、銚子電鉄の終着駅がある「外川(とかわ)」というまちを整備したのは、一人の和歌山県出身者だ。今週は、このまちの歴史についてふれたい。

 外川は千葉県銚子市の南部に位置する港町。外川漁港では一本釣りのキンメダイ「銚子つりきんめ」が水揚げされることで有名だ。

 このまちが整備されたのは1658年のこと。1656年に紀州・広村(現在の広川町)から移住した「崎山治郎右衛門(さきやま・じろうえもん)」が、冷たい親潮と暖かい黒潮がぶつかる豊かな漁場であるこの地を見込み、築港工事を開始。外川漁港の完成を受け、南向きの斜面に集落を整備。和歌山からの移住者を多く受け入れ、漁業や海運業に従事させた。

 自らが取り入れた新しい漁法によるイワシ漁により、イワシが豊富に捕れたことから、まちはたいそうにぎわったという。そのにぎわいは、いまも「外川千軒大繁昌」という言葉で語り継がれ、町内の神社には治郎右衛門の功績をたたえる石碑が建てられている。

 外川の集落を筆者も歩いてみた。当時の面影を残す石畳の道と、きれいに整備された碁盤目状の区画、日当たりを重んじ、なだらかな南斜面を利用したまち並みは、和歌山の温暖で豊かな港町を思い出させるものだった。

 外川集落へは銚子電鉄外川駅下車すぐ。レトロな駅からはじまる和歌山を感じるまち歩きを、ぜひあなたも。  (次田尚弘/千葉)

外川集落への玄関口(銚子電鉄外川駅)

外川集落への玄関口(銚子電鉄外川駅)