やり直せる社会目指して 職親プロジェクト

少年院出院者や刑務所出所者の再犯防止を目的に、企業と連携して就労機会を提供することで円滑な社会復帰を目指す取り組み「職親(しょくしん)プロジェクト」の県内での実施に向け、日本財団は11日、企業向けの説明会を和歌山市美園町の県JAビルで開いた。

一般刑法犯の検挙者は平成17年以降、減少している一方、再犯率は同9年以降、上昇し続け、同26年には47・1%となっている。同プロジェクトは、こうした現状を改善し、「やり直しのできる社会」の実現を目指すもの。「職親」には、企業が職場を提供するだけでなく、元受刑者の更生と社会復帰を親のように支えるという意味が込められている。

説明会には、主催の日本財団から福田英夫コミュニケーション部部長、協力企業から千房㈱(大阪市浪速区)の中井政嗣社長と㈱信濃路(和歌山市加納)の西平都紀子社長、法務省から和歌山保護観察所の熊部昭滋所長と西日本矯正就労支援情報センターの都坂圭吾さん、協力団体から県更生保護協会の谷崎博志理事長らが出席。プロジェクト参加を検討する和歌山市内の26社が説明を受けた。

プロジェクトで雇用の対象としているのは主に軽犯罪による元受刑者。家庭の崩壊などにより身元引受人がいないため、軽犯罪でも少年院などが受け入れているケースもあり、家庭教育に代わり社会で生きるための基本的な力を養う「中間施設」での支援もある。企業が求める資格の取得を出所前の受刑者に要請することも可能で、企業が利益を上げながら社会問題の解決に取り組むプロジェクトとなっている。

時間がかかり、失敗例も少なくないこの取り組みへの参加を増やすには、一人の元受刑者を一社だけで支えるのではなく、プロジェクトチームとして支える必要があることが強調され、信濃路の西平社長(53)は「家庭崩壊などで帰る場所がない元受刑者たちの受け皿を作りたい」と話し、協力を呼び掛けた。

千房の中井社長(71)は、42年前に創業した当時、人手不足を補うために学歴などを問わず採用した従業員の中に少年院や鑑別所出身の少年らがおり、仕事を得たことで立ち直る人が多く、幹部社員になる人も出てきたことを紹介。「人には無限の可能性があり、周囲が目をかけて支えることで成長する。情をかけても裏切られることもあるが、少数でも更生する人がいることは確実。非行に走った人を立ち直らせる教育が本当の社員教育なのだと学び、社員が会社を誇りにしてくれている。何をメリットとするかはその企業次第」とにこやかに語った。

説明会の参加企業からは、元受刑者を受け入れることを社員がどう受け止めるのか心配▽情での働き掛けだけでは取り組みが行き詰まるのではないか▽企業側にはどのようなメリットがあるのか―などの質問が寄せられていた。

県内の職親プロジェクトは6月の発足を目指している。

職親プロジェクトへの参加を呼び掛けた(左から)千房の中井社長、信濃路の西平社長、日本財団の福田部長

職親プロジェクトへの参加を呼び掛けた(左から)千房の中井社長、信濃路の西平社長、日本財団の福田部長