屋形大通り「市内一住みやすい街に」
「商店街が協力して、大好きな地元を盛り上げたい」。そう願い、活動に乗り出した人がいる。和歌山市鷹匠町の出口隆之助さん(56)。自身が店舗を構える広瀬地区の屋形大通り商店街は近年、衰退が進んでおり、その原因が地域との連携不足にあると判断した。にぎわい再生に向け、清掃活動などに力を入れつつ、生活上の困難について相談を受け付ける「つながり庵」も開設。出口さんは「つながりの濃さが広瀬の魅力。少しでも多く地元に貢献したい」と意気込んでいる。
出口さんは同商店街で祖父の代から続く「出口酒食品店」を経営。ワインを中心に、品ぞろえには定評がある。大学卒業後、大阪府で会社員生活を送っていたが、父の病気を機に帰郷し、約15年前から店を切り盛りしている。
同商店街は終戦直後の闇市から発生したとされる、「屋形市場」を中心に発展。一時は大規模なアーケードが整備されるなど、地域の顔としてにぎわいを見せた。しかし、郊外化の進行や大型店との競合などで体力を奪われ、1963年に「主婦の店和歌山店(現・オークワ屋形店)」の進出をめぐり「広瀬大通り」と「屋形商店街」に分裂したことも影響し(約7、8年前に再統合)現在は22店舗に減少している。
出口さんは3年前に同商店街振興組合の理事長に就任したが、当初は活性化に向けた取り組みに消極的だったという。しかし、2014年に和歌山市の若手職員有志で構成するボランティアグループから、北海道で商店街が雪下ろしを行っていることなど、生活上の身近な問題解決に取り組んでいることを聞かされ、同様の取り組みを始めることを決意した。
以前から実施している毎月第3日曜日の清掃活動「屋形つながりプロジェクト」や子どもたちの見守り活動に加え、ことし1月には生活上の相談を無料で受け付ける窓口「つながり庵」を設置。既に電気や水道に関する相談があり、迅速な解決に成功した。
6月にはフリーマーケットを開催し、大雨の中、多くの買い物客を集めたという。
多くの人は商店街に地域密着の印象を持っているが、出口さんは「本当の意味で地域に溶け込んでいるとは言えなかった」と打ち明ける。そうした反省を踏まえ、各店舗を魅力的に紹介した地図を作成し「即効性は期待できないが、地道な活動で広瀬を20年後に市内で1番住みやすい街にするべく頑張っていきたい」と語った。
出口さんは県立向陽高の同級生とロックバンド「病み上がり決死隊」を結成し、毎年11月に同市紀三井寺のデサフィナードでライブを開いている。詳細は決定後、本紙にて掲載。