障害に関係なく心は同じ つばさの会講演会
家族に精神障害を抱える会員が、互いのサポートや障害への理解を深める活動に取り組んでいるNPO法人和歌山市精神障害者家族会「つばさの会」(岡田道子理事長)の講演会がこのほど、同市手平の和歌山ビッグ愛で開かれ、日本福祉大学の青木聖久教授の講演や家族との対談が行われた。
青木教授は「障害があろうがなかろうが人の心は何も変わらない。当たり前の喜怒哀楽があり、心の中の千のうちの一つが障害というようなことにすぎない」と述べ、障害の有無に関係ない、人としての一般性を強調。4人に1人が生涯の間に精神障害を体験するといわれていると紹介し、自分または家族などが精神障害になり、誰にとっても身近な問題であることを話した。
精神障害者の暮らしに必要な要素については、経済的基盤や居場所、地域生活支援体制といった外発的要素に加え、内発的要素として「自分自身の暮らしへの想い」「社会の自分に対する評価」「自己有用感」の三つを指摘。生活において結果的に失敗体験が多くなりがちな障害者にとって自己有用感は特に重要であり、周囲の人間が評価をする際には、誰かと比べる相対的評価ではなく、本人の置かれている状況から見た絶対的評価が大切と語った。
青木教授は、ソーシャルワーカーとして精神障害者家族から受けてきた数々の相談事例も紹介しながら、家族ができることとして、本人に愛情を注ぐ、家族自身が人生を楽しむ、開放的な関わりを考える、いろいろな生き方や価値観を知る、の4点を挙げ、共通の悩みを持つ家族会につながる重要性を強調した。
講演に続いて、青木教授と子どもが精神障害を抱えているつばさの会会員の母親2人が対談。わが子を治す手立てを求めて全国各地の医師や施設などを訪ね歩いたこと、家族会に入って悩みを共有して言いたいことが言える場ができたことなど、2人は体験を赤裸々に語った。会場からも家族の精神障害についての悩みや質問などが寄せられ、新たな人のつながりを生むきっかけとなっていた。