生きる選択を 宇賀部神社に小野田寛郎の碑
海南市小野田の宇賀部神社(小野田典生宮司)の境内に、戦後も約30年間、フィリピン・ルバング島で1人で戦った元陸軍少尉、小野田寛郎さん(おのだ・ひろお、1922~2014)の著書『生きる』の一節がつづられた石碑がある。いじめや不登校など、さまざまな問題で子どもが自死する時代にあって、寛郎さんの言葉から「生きること」を見つめてもらおうと、小野田宮司が設けた。
「小野田寛郎は、『死の他にも選択肢がある』と言っていました。学校に行くのがつらいときもあると思いますが、『休むことも生きる選択肢』だと」。小野田宮司は、子どもが自ら命を絶つ例が絶えない現実から、寛郎さんの言葉を振り返り、石碑の設置を考えた。
寛郎さんは生前、青少年の健全育成活動にも力を入れていた。最後の著書『生きる』には、絶望や困難に屈せず、生きるための教訓がつづられている。
新たな石碑は、同神社境内に以前からある、寛郎さんの座右の銘「不撓不屈(ふとうふくつ)」を刻んだ石碑の横に、ことしの8月下旬に設けた。
刻まれたのは、著書『生きる』から、いつ殺されるか分からない戦場で、死の恐怖を克服し、生きることができた理由を語った箇所。生きられたのは任務遂行という「目的」があったからであり、「もし絶望の淵(ふち)に追いやられたらどんな小さな事でもいいから目標を見つけることだ。その実現のために生きることだ。死を選んではならない。なぜなら人は『生きる』ために生まれてきたのだから」とつづられている。
小野田宮司は「目標を持って、日々、希望に胸を膨らませて、人生を送りたいものです」と語り、石碑に込めた思いを子どもたちに伝えることを願っている。