過疎地の事業承継へ 県が移住者マッチング
県は、県内過疎地域の活性化に向け、後継者不足に悩む事業主と起業を志望する移住者のマッチングなどに取り組む「わかやま移住者継業支援事業」を5月から開始した。県内の移住推進市町村を対象に、地域のなりわいを引き継ぎつつ、移住者ならではの新しい視点を生かして活性化に取り組んでもらい、にぎわい創出を目指す。同様の取り組みは他の都道府県で例がなく、今後の行方が注目される。
県移住定住推進課によると、県内の過疎地域では、人口減少に伴う市場の縮小や後継者不足から、商店などの廃業が進み、地域としての機能の弱体化やにぎわいの低下が生じている。一方で、県内への移住者は増えており、起業を通じた過疎地域の活性化に関心を寄せる移住者も多いという。
県は平成24年度に「県移住者起業補助金」を導入。地域資源(農林水産物、伝統的生活文化や自然環境など)を活用した起業プランを採択し、1件当たり100万円を上限に支給しており、採択数は年間10件程度となっている。地元の食材を使ったカフェを開くプランが多い。
新たな「継業支援事業」は、後継者を求める事業主と起業を希望する移住者のマッチングを、県や県内市町村、商工会などの機関が支援。単なる事業承継で終わらせず、新しい取り組みの実施も求める。支援機関は事業主を訪問し、人となりを把握して登録を行い、移住者は申し込み書を県、わかやま定住サポートセンターに提出して登録する。県や市町村が同席の上で当事者同士が面談し、マッチングが成立した後は、商工会などによる経営アドバイスも受けられる。
さらに、継業後の経済的支援として「移住者継業補助金」を導入。60歳未満で県外から移住推進市町村に移住し、3年未満の人を対象に、事業の引き続きや再活性化に必要な経費を最大100万円まで補助する。年に2回募集し、本年度1回目の締め切りは8月31日。希望者は市町村の移住交流担当課に申し込む。
都道府県が移住者による継業のマッチングと補助金支給の両方に取り組むのは全国初といい、同課は「地域の商店などは大切な資源。まずは気軽に相談してほしい」と利用を呼び掛けている。