和大がNASA衛星受信局に 北太平洋域初
和歌山大学(和歌山市栄谷、瀧寛和学長)の電波観測通信施設が、NASA(アメリカ航空宇宙局)の気象観測衛星群「CYGNSS衛星群」の受信局に選ばれた。世界で4番目、北太平洋域では初めて。日本周辺の台風や波浪、遠隔地の津波などの観測を通じて、海洋での現象の解明が進むことが期待される。
同大協働教育センターの秋山演亮教授らは、九州大学応用力学研究所の市川香准教授が代表となって平成26年度から始まった研究プロジェクト「GNSS反射信号を用いた全地球常時観測が拓く新しい宇宙海洋科学」に参加している。
同プロジェクトは海洋科学と宇宙工学の融合を通じて生まれた「GNSS―R」という観測手法を用いている点が特徴で、GPSなどの測位衛星からの信号が海面で反射されることを利用し、小型衛星がGNSS衛星からの直接波と海面からの反射波を比較することで波の高さや潮位、風速などが分かるようになっている。
昨年12月にアメリカで打ち上げられた「CYGNSS衛星群」はハリケーンの観測を主な目的とし、8機で観測するため、観測頻度が大きく向上し、台風が成長していく過程が詳しく分かるようになっているという。
秋山教授は同衛星群の効果として、台風の観測だけでなく、チリなどの南米で発生した巨大津波が太平洋を西進して日本に接近する場合、「これまでは途中の島で津波の高さを測るしかなかったが、今後は津波を連続して測ることができるようになる可能性がある」と話す。
北太平洋域で同衛星群を受信する施設に同大が選ばれたのは、大学キャンパス内にあるアンテナでは国内最大とされる直径12㍍の大型アンテナを同大が所有していることが大きな理由となった。
同アンテナはこれまで、同大が平成26年に打ち上げた超小型衛星「UNIFORM―1」を運用してきたが、九州大からの打診もあり、CYGNSS衛星の受信も行うことになった。3月に受信を開始して以降、これまでにトラブルは生じていないという。
秋山教授は「プロジェクトはまだ始まったばかり。気象や海洋関係の人たちと一緒にどれくらい使えるか検証したい」と話し、今後のプロジェクトの発展に期待を寄せている。