華やか繊細な加賀蒔絵 前端春斉さん漆工展
石川県の加賀蒔絵(まきえ)師・前端春斉(まえはた・しゅんさい)さん(53)の漆工展が4日まで、和歌山市湊通丁北のホテルアバローム紀の国2階ギャラリー龍門で開かれている。
美術・茶の湯道具の翠洸洞(津市)が主催。前端さんの漆工35周年、父・雅峯さんの傘寿を記念。棗や香合、水指、炉縁、茶わんなど加賀蒔絵の華やかな八十数点を出品している。
三代目である春斉さんは加賀塗の名家に生まれ、蒔絵一筋に研鑚。塗師である父の雅峯さんと共に建長寺の創建750年修復事業で重要文化財の漆工部門を担当し、米国の美術館での蒔絵公開実演をするなど活躍している。近年は、木ではなく素焼きの陶器を素地とし、生漆を吸い込ませて焼き付ける「陶漆」の作品に力を注ぐ。
会場には松竹梅や楓、ホタルの他、伝統的な大和絵風の人物などが細密に施された作品が並び、春斉さんは「先人の積み重ねの中には、手本となるものがたくさんあります。古典の中から、その絵柄や形状を生かしていきたい」と話す。
父・雅峯さんも多数賛助出品しており、本阿弥光悦の「樵夫蒔絵硯箱」を写した作品は、金蒔絵や螺鈿(らでん)、鉛の装飾が見事に調和している。
会期中は呈茶席も設けられ、春斉さんは「お茶どころ、紀州徳川家のお膝元でこのように展覧会ができ、非常に晴れがましく思います。実際に温かみのある器を手に取り、皆さまにお茶をお召し上がりいただきたい」と話している。
また絵付教室も開催(午後1時~、2時半~)。干菓子盆に絵付体験が楽しめる。材料費は実費。
午前10時から午後5時(最終日は4時)まで。問い合わせは同ギャラリー
(℡073・436・1200)。