地酒と洋菓子コラボ 岩出の成瀬さん開発
岩出市清水で洋菓子店「T―NARUSE」を営む成瀬武弘さん(50)は、創業100年を超える同市畑毛の酒造会社、吉村秀雄商店の地酒「車坂」の酒かすを使ったオリジナルフィナンシェ(焼き菓子)「車坂」を開発した。岩出に根付いた店同士のコラボレーションで生まれた新商品は、発売から4カ月がたち、人気を高めている。
フィナンシェ「車坂」は、表面はつややかな黄金色で、しっとりとした生地からは酒かすの芳醇な香りがほんのりと立つ。小さな焼き菓子を包んだパッケージには、吉村秀雄商店の酒蔵を東側から眺めた情景が描かれている。
成瀬さんは、同商店が夏に行う新酒の蔵開きに毎年訪れており、「商売をさせていただいている岩出市を盛り上げるため、老舗の協力で特産品を作りたい」と酒かす入り洋菓子の開発を思い立った。
フィナンシェは、バター、アーモンドパウダー、卵などを使用し、長方形に焼き上げるフランスの伝統菓子。「車坂」は、酒かすを卵白でのばしてから他の材料と混ぜ合わせ、焼き加減に注意しながら仕上げるという。酒の苦手な人にも好まれる味を目指して試作を繰り返し、レシピの完成までには半年を要した。
成瀬さんは岩出で生まれ育ち、高校卒業後に上京。品川、青山などで約10年にわたり洋菓子の技術を学んだ。東京での修行期間はバブル期に当たり、ディスコで夜通し踊るなど、修行以外の楽しい思い出もあるが、「同じ業界の限られた人間との付き合いばかりだった」という。
28歳で故郷に戻り、祖父の代は和菓子、父の代からは洋菓子を手掛けてきた店を継承。平成25年の全国菓子大博覧会ではマドレーヌが金賞を受賞するなど、確かな製菓技術で地元に愛され続ける店を盛り立ててきた。地域の世話役を引き受けることもあり、故郷の人の関わりの温かさを心地良く感じている。
新しい店ができると人の流れが生まれるように、老舗店にも新商品が必要と感じている成瀬さん。「車坂」が地元の銘菓に育っていくことを期待しながら、次の商品開発にも意欲を燃やしている。