桐蔭4年連続の全国準優勝 缶サット甲子園

高校生がモデルロケットで空き缶サイズの模擬人工衛星「缶サット」を打ち上げ、上空での放出、降下、着地の過程を通して技術力、創造力を競う「缶サット甲子園2017」(8月27~29日、千葉県船橋市)に和歌山県立桐蔭高校科学部が出場し、4年連続で準優勝となった。

缶サットとキャリアと呼ばれる機構を自作して打ち上げ、搭載したカメラでターゲットを撮影してデータを集め、それぞれ考えたミッションについてプレゼンテーションする大会。定められた技能を競うだけでなく、生徒がオリジナリティーあふれる缶サットを作り、そのクールさを競う。

同校は7月の近畿地方大会で優勝し、10年連続で全国大会に進出。ことしはチームの中心メンバーである2年生の谷口翔麻君、中家壮司君、田中久温君、吉村風汰君が4月から考えてきた「未知の惑星探査」をテーマに、缶サットの位置や姿勢を調べるミッションを設定した。先輩が積み重ねてきた技術力で、自分たちが楽しめるミッションにしたかったという。

地方大会では缶サットの動きを3Dで再現できる「CanSat Player(CSP)」を開発。位置と姿勢の情報を取得できるセンサーを備えた設計にし、情報を基に動画が再生できるよう、姿勢情報を再現するための数式も導き出した。

さらに、打ち上げるためのモデルロケットも1年生が改良し、先端を空気抵抗の少ないオジーブ型に変えた。

全国大会では、CSPを携えて缶サットの姿勢や位置について研究。缶サットの中身もデータ解析の時間短縮のため改良した。4層構造のうち1層にセンサーを取り付け、外の温度や打ち上げ技術の影響で数値が変化しやすい照度センサーを変更し、さらにミッションのために地磁気センサーも取り付けた。これらの変更に伴い、缶サットの核となるマイコン部分も再設計した。

ロケットは改良のかいあって真っすぐに飛んだが、反面、位置や姿勢を再現できるCSPの能力を十分に発揮できないことになり、プレゼンではCSPの機能、活用性を十分ににアピールできなかったと振り返る。

しかし、審査では専門家から、姿勢情報の理論が高く評価されたという。

大会を振り返り、谷口君は「自分のやってきたことに自信も誇りもあったので、悔しさはなかった。後輩が優勝できるように技術を伝えたい」、田中君は「準優勝は悔しいけど、研究の正しさは認めてもらえた。缶サット以外にも研究を応用していけたら」、中家君は「データ処理という裏方の仕事だが、いろいろ褒めてもらえて良かった」、吉村君は「これだけ頑張れたのに(優勝できなかった)、と思うと悔しかったが、一緒にここまで来れたのは誇らしく思う」とそれぞれ話していた。

次回の缶サット甲子園は、来年10月6~8日、県内で全国大会が行われる。

準優勝した桐蔭高校缶サットチーム

準優勝した桐蔭高校缶サットチーム