徳川頼貞が集めた宝 南葵音楽文庫を公開

紀州徳川家16代当主・徳川頼貞が集めた西洋音楽資料「南葵音楽文庫」の閲覧室が和歌山県立図書館(和歌山市西高松)に開設され、3日から公開が始まった。同館ではプレオープンセレモニーと記念講演、演奏会が開かれ、県立博物館(同市吹上)では楽譜コレクションの企画展が開幕した。

西洋音楽に高い関心を持っていた頼貞は、21歳の時に英国ケンブリッジ大学に留学。西洋の音楽文化を学び、帰国後に日本初の音楽専用ホール「南葵楽堂」を東京・麻布に建設。同文庫はホール地下の音楽図書館に収められていた蔵書の数々。ベートーベンやリストらの自筆楽譜、シューベルト「魔王」の初版譜、世界に十数点しか残されていないバッハのオルガン用変奏曲の楽譜など世界的に貴重な資料となっている。

関東大震災や太平洋戦争を乗り越え、昭和52年以降は読売日本交響楽団が所蔵しており、昨年県に寄託された。

県立図書館の閲覧室は整理が終わった資料から順次公開される。9日から来年3月末までの毎週土曜日午前11時から、同文庫の資料について学ぶミニレクチャーを開催し、コレクションの魅力を広める活動も始まる。

セレモニーでは仁坂吉伸知事が「図書館、博物館に整備を頑張ってもらい、世界へ公開できたら。日本の西洋音楽界の恩人が集めた文庫をもう一度世界の宝としてアピールできるのは光栄なこと」とあいさつ。読売日本交響楽団の小林敬和理事長は「頼貞の出身地で文化遺産に光が当たるのはこれ以上ない喜び。これからも日本と世界の音楽文庫の普及と発展につながるように県と協力していきたい」と述べた。

来賓らは閲覧室を見学し、ガラスケースに収められた資料の解説を聞いた後、公開記念講演と演奏会を楽しんだ。

慶應義塾大学の美山良夫名誉教授が「南葵音楽文庫に宿る『魂』」と題して講演。記念演奏は日韓フレンドシップ・コンサートとして、同図書館音楽監督で東京藝術大学学長の澤和樹さん(バイオリン)、ヤン・ソンウォンさん(チェロ)ら6人による室内楽が響いた。

県立博物館でも一部資料が保管されており、3日に始まった企画展「南葵音楽文庫 音楽の殿様・頼貞の楽譜コレクション」では、ベートーベンの自筆楽譜など約100点の貴重な資料が展示されている。博物館に保管されている資料は文庫閲覧室のパソコンからも閲覧可能。

17、24日、1月7、14、20日の午後1時半から芸術資源研究所研究員によるミュージアム・トークを開催。図書館、博物館とも月曜(祝日の場合は次の平日)と29日~1月3日が休館(他に書架整理日あり)。問い合わせは図書館(℡073・436・9500)、博物館(℡073・436・8670)。

テープカットでプレオープンを祝う仁坂知事(中央)、小林理事長(左隣)ら

テープカットでプレオープンを祝う仁坂知事(中央)、小林理事長(左隣)ら