肺線維症の発症構造を解明 医大の近藤教授ら
呼吸困難などの症状が表れる原因不明の病気「特発性肺線維症」の発症メカニズムを、和歌山県立医科大学と金沢大学の研究グループが解明。肺線維症を軽減させる細胞の働きを見いだした。7日に県立医大法医学講座の近藤稔和教授が同大で記者発表を開き、研究成果について説明した。今後、肺線維症に対する新たな治療法の開発が期待される。
特発性肺線維症は肺の中で酸素や二酸化炭素の通り道である間質の厚みや硬さが増すことでガスの交換が難しくなり、発症する。近藤教授によると、せきや息切れなどの症状の他、重い呼吸困難に陥り死に至ることもあるという。
国内の発症者は1万数千人とみられ、発症する人の多くを50代以上の男性が占めている。喫煙や加齢が原因とする見方もあるが、明確な原因は分かっていない。
近藤教授らの研究グループはマウスを使って実験を行い、肺の中で酸素と二酸化炭素を交換する部位の肺胞にできた傷を修復する際に、細胞が過剰に修復されて硬くなることで特発性肺線維症を引き起こすとされていることから、細胞「M2マクロファージ」と「ファイブロサイト」の働きを抑えることで、過剰な修復が行われなくなることを発見した。
研究成果は、4日に自然科学分野のインターネット論文サイト「SCIENTIFIC REPORTS」に掲載された。
近藤教授は法医学者として検視に携わってきた経験から、「突然死の原因の一つに肺線維症が多く、農薬に使用されるパラコートが肺線維症を進展させることもある」と指摘。今回の研究成果について「これをきっかけに阻害薬の研究が進むことを期待している」と話した。