全日本制しアジア杯へ デフバスケ誠family

 和歌山と大阪の聴覚障害者らでつくるデフバスケットボールチーム「誠family」が2、3日に愛知県で行われた「全日本デフバスケットボール選手権大会」で優勝。来年11月にオーストラリアのメルボルンで行われるアジア太平洋クラブカップへの出場権を獲得した。チームを率いる和歌山県岩出市の上田頼飛(よりたか)監督(36)は「日頃重ねた練習のたまもの。日本がまだ手にしたことのないアジアクラブでの優勝を狙いたい」と意気込んでいる。

 同チームは10月末に行われた西日本大会で優勝し、全日本への出場権を得た。選手権には全国から7チームが出場。健常者が1人出場してもよいというルールで、デフバスケ男子日本代表監督でもある上田さんは選手兼監督としてコートに立った。

 「誠family」は2年半前に結成され、和歌山在住者は上田監督のみ。週に1度、大阪府堺市で集まり練習を重ねている。これまで全日本デフバスケットボール選手権大会、全国デフバスケットボール大会合わせて4度の優勝経験がある。

 今回は19歳から36歳までの健常者3人、日本代表選手9人を含む聴覚障害の選手12人が出場した。

 準決勝は「東京レゾネーターズ」と対戦し98対48で快勝。続く福岡エンペラーズとの決勝では果敢に攻めてファールをもらい、フリースローで確実に点数を重ねた。相手に攻め入る隙を与えず、後半は安定感を増してリード。点数が開いても気持ちを緩めることなく、全員出場の105対48で栄光を手にした。

 上田監督によると、健常者を交えた試合の場合、健常者が他のメンバーをリードする試合展開がほとんどだが「うちのチームは逆。僕がいなくてもいいぐらい頼もしかった」と話す。それは日常生活でも密に連絡を取って信頼関係を築き、試合ではジェスチャーやアイコンタクトを駆使した心の通じ合いによるものが大きいという。「試合ではコミュニケーションを図るのが大変ですが、それを補えるようなつながりがゲーム内で見られるようになったのが大きな収穫」。

 メンバーの津屋一球(かずま)さんがMVP、得点王、3P王の3冠に輝き、長田拓巳さん、早川倫夫さんがベスト5の選手に選ばれた。

 残念ながら、現在のところ和歌山で活動する選手はいない。上田監督は「競技としてのレベルは十分に高い。認知度を上げ、和歌山からぜひ日本代表選手を出したい」と話している。

喜びに沸く「誠family」(同チーム提供)

喜びに沸く「誠family」(同チーム提供)